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CROSS 第6話 『死守』

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 敵側の指揮官は、通信兵がかつぐ旧式の背負い型通信機を使って、司令部と通信していた。彼らは山口たちの攻撃が届かない場所に隠れていた。
「司令部! 敵は守備隊だけでなく、応援の部隊がいるもようです! 応援の部隊は『CROSS』のようです! 正面突破は無理です! 指示を願います!」
指揮官がそう言うと、司令部側から舌打ちの音が聞こえてきた。そして、司令部側は何かを見ながら、
「こっそり後ろ側に回り込んで、挟みうちにしろ!」
司令官とみられる男の声がした。
「了解! 正面突破は優先事項から外します!」
指揮官はそう司令部に言うと、副官と見られる下士官を手招きで呼び寄せた。簡単な説明を指揮官から受けた副官は、近くにいた兵士を30人ぐらい連れて、大きく迂回するかたちで、おそるおそる山口たちの後ろに控える魔こう炉へ忍びよる。

「山口さん! 敵の勢いが弱くなっています!」
いつの間にか山口の近くにいたウィルが言った。
 よく見ると、ガリアもいる。彼は「トランペット」という愛称のあるフランス製の自動小銃『FA−MAS』を使って、敵兵を的確に撃ち抜いていた。
「まだ始まったばかりなのに、こんなに早く勢いが収まるはずがない!」
山口はウィルにそう言うと、胸のバッジ型通信機で特務艦のブリッジと通信を始める。

「ヘーゲル! いるか!」
「ええ、ここにいます」
山口からの突然の連絡に、ヘーゲルは顔色一つ変えずに、いつもの冷静な口調で答えた。
「そちらで戦闘が始まっていることはわかっています。何の御用でしょうか?」
「すべての敵兵の位置をスキャンしてくれ!」
「わかりました」
ヘーゲルのその声の後、ブリッジ側から操作音が聞こえてきた。
「変な動きはあるか」
山口は小さな手鏡を使って、塹壕の中から外側を見渡していた。ところどころに敵兵がいるが、確かにさっきよりかは格段に人数が減っていた。
「山口さん。敵は分隊ごとの少人数に分かれて、後方の魔こう炉に向かっています」
「わかった。ありがとうヘーゲル。今夜は徹夜になりそうだが、朝までサポートを頼めるか?」
「おまかせください」
ヘーゲルは静かに言った。

 山口は通信を終えると、必死に応戦している隊員たちや兵士たちに向かって、
「正面は我々CROSSに任せて、守備隊は迂回して魔こう炉に向かっている兵士を片付けろ!」
彼の命令に、守備隊はすぐに魔こう炉のほうへ駆け出した。よく見ると、守備隊の少尉が先頭にいた。