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CROSS 第6話 『死守』

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第2章 夜襲



「あれ? オレはどうしてここに?」

 山口は特務艦のブリッジの指揮官席に座っていた。他に人はおらず、気配も感じられなかった。
「オレは第7世界にいるはず……、ウワァ!!!」
山口は叫んだ。なぜなら、本来なら三原色で構成された異次元空間が、ブリッジの前面ウィンドウいっぱいに広がっているはずが、黒一色の闇が広がっていたからだ……。
「……これはどういうことだ」
山口が指揮官席に座ったままうろたえていると、ブリッジのドアの1つが静かに開く。その瞬間、ブリッジの室温が急に下がった気がした……。

「どうしたの?」

 その声とともに、ブリッジに一人の人物が入ってきた。山口はその人物を見て青ざめた……。

 ……その人物は、山口より少し若く見える女性だった。地味な顔つきだが綺麗だ。私服で、なぜか靴を履いていなかった。
 その女性は、指揮官席に座っている山口の目の前に来た。彼は目を見開き、その女性を見ていた。彼は明らかに、その女性にたじろいでいた……。
「久しぶりね、山口」
女性は、彼を見下す口調で言った。彼女は冷たい目つきで、彼をじっと見ている。彼は、彼女から目線をそらしてから、ゆっくりと虚勢が感じられる口調で、
「……これは夢だ。おまえは、その、死んだはずだからな!」
女性はフフッと少しだけ笑ってから、
「そうよ、ここはあなたの『夢の世界』。今回は、私が登場人物ってわけ。なんなら、この夢の話を小説にして、ノベリストに投稿しちゃっても構わないわよ?」
「……それで、何の用だ? 金でも借りてたか?」
山口は落ち着いたようで、いつもの調子で言った。
 女性はフンッとすると、両手の手のひらを、指揮官席の肘掛けに乗せている山口の手の甲にもたれるように押し付け、自分の顔を、彼の顔から20センチぐらいまで近づけた。
「イテッ!」
手を押し付けられた山口は痛そうな声を出すと同時に、再びたじろいだ。そんな彼に、女性は冷笑を浮かべていた。そして、女性は大きく口を開いた。女性の瞳には彼の顔が映っている。しかし、瞳の中の彼は、ひどく怯えていた……。

「その指揮官席は私が座るはずだったのに!!! 私が座るはずだったのに!!! 私が座るはずだったのに!!!」

 大きく開いた女性の口から、悲痛な叫び声が飛び出した。女性は
「私が座るはずだったのに!!!」とキチガイのように叫び続けた。山口はパニック寸前の心情で、女性の叫び声を聞いていた……。
 やがて、彼に赤い液体が飛び散り始める。その量はどんどん増えていき、山口を赤く染めていった……。
 ……女性はひどい有り様になっていた。頭に開いた穴から赤い液体が噴水のように吹きだし、女性が着ていた服を、赤1色に染め上げた……。言うまでもないが、赤い液体は血だった……。
 そんな状態にあるにもかかわらず、女性は叫び続けている。

「山口!!! 山口!!!」

 女性は山口の名前を、選挙の宣伝みたいに連呼し始めた。口から飛び出した血が、彼の顔を濡らす。しかし、呼びかけられている彼本人は、ほとんど気を失っていた……。

「山口さん!!! 山口少佐!!! 山口さん!!!」