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CROSS 第6話 『死守』

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 オートバイ型のロボット『モト』は、偵察の結果を少尉に報告した。そして、報告が終わると、どこかに走り去った。そのあと、山口と少尉は偵察結果を元にこれからについて話し合った。
 そして、太陽がちょうど真上を通り過ぎたころ、話し合いが終わり、少尉は守備隊の所に、山口はCROSSの所に歩いていった。どちらも昼食を取っているところだった。彼は炊事班から自分の昼食を受け取ると、隊員たちに向かって指示を出した。
「工兵は、防御陣地の強化と対モビルスーツ地雷の設置をいそげ。衛生兵は、守備隊の負傷兵の救護を手伝え。そのほかの隊員は、夕飯の時間まで交代でしっかり寝ておけよ! なぜなら!」
そこで山口は、一旦口を閉じる。たいていの隊員はその言葉の続きがわかった。
「今夜は徹夜だからな!」



 そのころ、特務艦のブリッジでは、ヘーゲルが司令部と通信をしていた。山口が座る席の目の前にあるスクリーンには、司令部側の通信相手が映し出されていた。司令部側は作戦会議室で、正面に山口が司令部で話をした女司令官がおり、参謀長などの側近が同席していた。
「ヘーゲル大尉、山口少佐を現地に赴かせてしまって大丈夫なのかね? 激戦区なのだよ?」
そう言ったのは、女司令官の隣りにいた初老の参謀長だ。
「参謀閣下、あの人はデスクワーク派の人間ではありません」
ヘーゲルは冷静に答えた。
「……今彼に死なれては困るのよ。彼に頼みたい仕事が山ほどあるのよ」
今度は女司令官だ。
「お言葉ですが、閣下。 何も我々CROSSにそこまで頼る必要は無いでしょう。陸軍にはCROSSの他にも特殊部隊はあるわけですし」
「……他の特殊部隊も忙しいのよ! 本隊のほうも対ザフト戦線や対デモナータ戦線に投入していて人手不足なのよ!」
女司令官は額を右手で覆いながら強めの口調で言った。
「とにかく、山口少佐を戦場から連れ戻したまえ!」
女司令官に代わって、参謀長が言った。
「残念ですが、山口少佐を連れ戻すことはできません」
ヘーゲルは、言いづらそうに返事した。
「なぜだね、大尉?」
「帝国連邦軍事規則2018条『本人の許可無く、指揮官を移動・転送させてはならない』というのを御存知でしょう。山口少佐は転送する許可に同意しないでしょうから」
そう言った大尉に女司令官は苦笑いを浮かべた。
「それには「但書き」があるぞ、大尉。『ただし、軍務や作戦に支障をきたしている指揮官は除く』とな!」
「山口少佐は、軍務や作戦に支障をきたしてはいませんよ」
「もういいわ!」
女司令官が言った。ヘーゲルと参謀長は口を閉じた。女司令官は続けて言った。
「山口少佐をしっかりフォローできるなら、この件はよしとします」
「ありがとうございます、閣下。それでは忙しいので、失礼します」
ヘーゲルはそう言うと、通信を終える。プツンと切れたスクリーンが、天井裏に収納されていった。