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CROSS 第6話 『死守』

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 モビルスーツは粉々に砕け散っていた……。パイロットは残骸のあちこちに散らばっていた……。ガレキを炎が照らしていた。残骸の1ヶ所にガリアとウィルが、暗闇の中、呆然と何かを見下ろして立っていた。山口は佐世保に支えられながら歩み寄った。
「ど、どうした?」
彼らに聞くと、彼らは泣きだした。
「椿さんが、椿さんが……」
山口がのぞいて見てみると、椿がボロボロになって仰向けで倒れていた……。衛生兵が首を横に振る。
「山口さんを助けようと、後ろからモビルスーツの燃料タンクがある部分に包丁を突き刺したんです……」
涙をぬぐいながらウィルが言った。
「死んでるよ。やれやれ、これでこいつとはおさらばか……」
「そうですね。仕事が増えちゃいますね……」
淡々とした山口と佐世保の口調に、
「何言ってるんですか!?」
ガリアは怒った。
 ところが、山口と佐世保は、そんなガリアをきょとんと見ていた……。
「おい、佐世保。ガリアとウィルは知らないみたいだぞ?」
「そういえば、言い忘れてましたね」
「いったい、何の話ですか!?」
ウィルも怒り出した。

   むくり

 ……椿がむくりと起き上がった。それを見たガリアとウィルは口をあんぐりと開ける……。衛生兵は、腰を抜かしていた……。
「椿は『カミサマ』だから復活するんだ。ただ、うちのCROSSとの『契約』は、1回でも死んだら終わりなんだ」
ガレキから立ち上がる椿を横目に山口がガリアとウィルに説明する。
 よく見ると椿は、傷1つ無いきれいな状態だ。椿は山口のほうを見ると、
「これで『契約』は終わりですので、私は帰りますね」
「ああ、お疲れ様。土産1つ無くて悪いけど」
「いいですよ。帰りにどこかで買って帰りますから」
呆然としているガリアとウィルを尻目に、山口と椿は淡々とした口調で話をしていた。そして、話を終えると、ガリアとウィルと佐世保の方を向いた。
「私の代わりに、山口がまた悪いことしないようにしっかりと見張っていてくださいね!」
「努力するわ」
椿の真剣な口調に、佐世保はやれやれといった口調で答える。しかし、唖然としたままのガリアとウィルは、黙ってうなずくことしかできなかった。
「それじゃあ、私はこれで。他の人にもよろしくお願いしますね」
「短い間だったが、ありがとう」

 その直後、椿は姿をぱっと消した……。その場には、包丁がころりと転がっている。
「命と引き換えという「契約」じゃなくて良かったですね」
「そのかわり、人間以外の相手してくれないけどな」
「彼女って、「監視役」だったんでしょ?」
「たぶんな。まあ、これで自由だな」
山口と佐世保は、話しながら塹壕へ歩いていく。ガリアとウィルはまだ呆然とその場で突っ立っていた……。だが、
「ガリア! ウィル! 早く来い!」
山口の大声で、ようやく我に返る。
 2人は、煙に巻かれたような表情で歩きだす……。