夏色の麦わら帽子 -ノンフェイス予告-
5.
色々なことをゆっくりと話し合おうと決めたその夜、騒がしさに二人は目を覚ます。警察は笛を鳴らし街中をかけずり回り、住人は寝間着のまま外へ飛び出して屋根の上を仰ぎ見た。
「何があったんですか?」
驚いた二人も外へ飛び出して、近くにいた人にそう訊ねると、
「ノンフェイスさ!」
彼は興奮した様子でそう答えた。
たったその一言で、ケイトもロンも目が覚めた思いがした。他の人たちも口々に彼の復活を称え、喜んでいる。お祭りのようだ。昼間でも、道にこんなに人があふれている様を見たことがない。
街の人たちと一緒になってその影を追い、一目見ようと深い青をした夜空に目を凝らす。
「あ!」
人々が口々に叫び、空を指さす。
本当に一瞬だけだったが、ケイトはその姿を見ることができた。もちろん、ロンも。
「ケイト、あれ」
ロンはケイトの肩に回した腕を、強く揺する。
「うん……うん!」
体中に喜びが満ちあふれるようだ。おかしくて、笑いが止まらない。
なかなかサマになっている。
そのノンフェイスは、麦わら帽子をかぶっていた。
<了>
作品名:夏色の麦わら帽子 -ノンフェイス予告- 作家名:damo