オルコンデリート(後編)
久しく低迷期が続いた後に、ピカンテは再び脚光を浴びるタイミングを迎える。デビュー十周年を迎えた98年、インディーズバンドブームが訪れる。インディーズの草分け的存在として、独自の活動を続けるピカンテに注目が集まった。各地の野外イベントやコンサートにゲスト出演し、果てはトリビュートアルバムまで制作され、廃盤同然だった過去のアルバムもセールスを伸ばした。自主レーベルで細々と活動を続けて来たが、この時期に他のレーベルの傘下に入り、ピカンテは公な活動の場に復帰した。
そして現在までの安定期を迎える。爆発的なセールスを上げることはないものの、とにかく安定した活動を続けて来た。ピカンテに心酔する旧来のファンに、新たなファン層を少しずつ巻き込みながら、無難とも言える活動を続けている。容姿は少しずつ老けては来ていたが、バンドサウンドは時間と共に洗練され、磨きが掛かっていた。
DVDの最後にメンバー全員のインタビューが収録されていた。二十周年の節目にリリースされるニューアルバムについて、メンバーがコメントしている。
「皆さん、こんにちは。ピカンテです。この度はピカンテデビュー二十周年記念DVDをお買い上げ頂きまして、(一同)ありがとうございます。もう二十年だよ、早いね~」
(隣の男)「ちょっと自己紹介、自己紹介。先に自己紹介でしょ」
「あ、はいはい。すみません。ボーカルの比留間暁です。次」
「はい。ベースの鱒田文路です」「次(比留間が促す)」
「ドラムの真田柳太郎でございます」「はい最後(比留間が促す)」
「うい、ギターの酒居鉄郎です」
(比留間)「改めましてピカンテです。よろしくお願いします~。ってな訳で、もう二十年ですよ。早いですね」
(一同)「早いね~」
(比留間)「いろいろありましたね~。いろいろありましたか?」
(一同)「いろいろありましたね~」
(比留間)「最初の十年は結構辛かったね。どうですか文ちゃん」
(鱒田)「そうね。ちょっと最初はいろいろあったね(笑)」
(比留間)「どうですか?柳(真田に振る)」
(真田)「いい経験だったと思うけど。俺は」
(比留間)「どうですか?鉄(続けて酒居に振る)」
(酒居)「う~ん、まあ振り返れば良かった時も悪かった時も一瞬だよね」
(比留間)「なるほど。感じ方や見え方はいろいろだったと思いますが、我々、あまり変わってないよね」
作品名:オルコンデリート(後編) 作家名:佐藤英典