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オルコンデリート(後編)

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 DVDは前半、四人のデビューまでの足跡と、デビュー後のバンドブームの活動絶頂期を紹介していた。
1985年結成のロックバンド『ピカンテ』。ボーカル比留間暁、ギター酒居鉄郎、ベース鱒田文路、ドラム真田柳太郎の四人で結成。全員が中学校からの同級生で、デビュー前からメンバーは不動だった。ずっと遊び仲間だったという四人。昔を紹介する写真が、四人の逸話と共に流れる。運動会、修学旅行、学園祭など、学校生活の様々なシーンで四人は一緒に居る。まるで兄弟や親戚のように、常に連れ合っていた。高校の回想シーンになると、楽器を持つ姿が流れ、ステージに立って行くようになる。
そして、88年の夏、メンバー全員十九歳という若さでメジャーデビューを果たした。ピカンテがデビューしたのは、当時のバンドブームの潮流に後押しされただけではなかった。四人の高い演奏技術と、曲に表現されている寓話的な世界観が、当時の十代、二十代前半の層に火を着けたのだ。メンバーの内の二人、ギターの酒居とベースの鱒田は、共に幼少からクラシックピアノを習い、その才能を活かして楽曲全般のアレンジにアイディアを詰め込んだ。ボーカル比留間は文才があり、小中と本を貪り読み、高校生の時には小説を書く文学青年だった。比留間の高校時代の小説作品は、後に出版されている。デビュー当時から多才ぶりが知られ、同世代には憧れの的となった。
デビューから三年の後に、バンドは所属レーベルから抜け、独立して自分たちのレーベルを立ち上げる。『大人が関わると音楽が汚れる』という理由から、一切合切を自分たちで始めた。バンドの主張は音楽業界から非難を浴びたが、若者には絶大な支持を受け、ファン層はさらに拡大した。
DVDはファンと笑う四人を、デビュー曲『神様との約束』と共に映し出していた。栄光に満ちた日々を、彼らのヒットソングにのせて紹介している。
三棚井はその映像の中で、取り分け印象に残ったシーンがある。それは、感極まって号泣しながら、ステージに上ってメンバーに抱き付く少女の姿だ。すごく素朴で地味な風貌のその少女。訴えかける表情が、三棚井の頭に残った。
 絶頂期は時代と共にあっけなく過ぎて行った。独立後の二年でバンドブームは終わり、レーベルもバンドも存続が難しくなった。レコード店からはピカンテレーベルの棚は撤去され、直販以外の流通は途絶えた。解散説がささやかれ、メディアの表舞台から『ピカンテ』という文字は消えて行った。