小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

オルコンデリート(後編)

INDEX|1ページ/15ページ|

次のページ
 
帰り道に近所の牛丼屋に立ち寄って、牛丼の超大盛りを食べた。普段は並盛で十分足りるのだが、三棚井は自棄食いしたい衝動に駆られて、券売機で超大盛りのボタンを押した。しかし普段食い付けない量で、思いのほか喉を通らない。八分目まで食べて断念した。
 帰宅した三棚井は、ダイニングのテーブルでしばらくぼんやりとした。それからソファに仰向けに転がって、天井を眺めた。
 三棚井は頭の中で今日起きた事は整理してみた、
ピカンテのメンバーとカメモトの計五人が、何らかの薬物を弁当に混入されて、病院に搬送された。五人は瀕死の状態。マネージャーの久坂が居なくなった。彼らの部屋に持ち込まれた弁当は五つ、食べた五人が倒れていたので、久坂は食べていないと考えられている。そして、都内に配送されている約百軒の客先からは、弁当を食べて倒れたという報告を受けていない。従って食中毒ではなく、また配送元からも薬物は混入していない模様。
久坂が疑わしいのは間違いがなかった。しかし、三棚井は釈然としなかった。なぜ、久坂がそんなことをしなければいけなかったのか。仮に久坂の仕業であったとしても、犯行に及ぶ直前にインタビューを受け付けるだろうか。断ることも出来ただろうに。自分たちの来訪を受けておきながら、カメモトの来訪は、まるで意外なことだったように対応していた。カメモトの予定外の来訪に鍵がありそうだと、三棚井は手掛かりをつけた。
 出掛けに観ようとしたピカンテの二十周年の記念DVDが、ガラステーブルの上にある。三棚井はそのパッケージを手に取って眺めた。黒地に白抜きの『サンプル』シールが貼られて、カラーコピーのパッケージデザインが施されている。表には最近のメンバー四人が、肩を組んでステージ上でスポットライトを浴びている姿の写真。裏面には、ほぼ同じ格好をしたメンバー四人のデビュー当時の姿があった。二十年間、同じメンバーでいるだけでもスゴイと三棚井は思った。家族でも会社でもそうは続かない。三棚井は中身を取り出してプレーヤーに突っ込んだ。