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オルコンデリート(後編)

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「ただ、一つ、今回のニューアルバムをリリースするに当たって、問題があった。これも俺の想像で、今のところ確かめる手段はないんですけど、バンドにとっても久坂さんにとっても大きな問題があったと思うんです。それは、ピカンテの世界観に終わりが来たんです。その終わりというのは、今回のアルバムが、多分、比留間が表現したい世界の最後ではないかと思うんです」
三棚井は息を継いで続けた。
「言ってることが全然分からないんだけど。どういうことかしら」
「今、説明する。ピカンテは二十年懸けて、一つのことをやってたんじゃないかってことだよ」
三棚井は向島を一瞥した。
「ファーストアルバムは『イニシエーション』、今回の二十一枚目のアルバムが『ユニヴァース』。これタローデ・パリというタロットカードの切り札の一と二十一なんです。久坂さんのブログに書いてあったんですけど、間の二枚目から二十枚目のアルバムタイトルも全部タロットカードの切り札の名前なんです。つまり、このタロットカードの切り札に従って、毎年一枚ずつアルバムを出していたんですよ」
「何で?何でそんなことをしてたのかしら?」
「知らないよ。ちょっと口挟まないでくれないかな。今、説明してるんだから」
向島は口を手で塞いだ。
「切り札は全部で二十二枚あります。一番目が『イニシエーション』で、二十一番目が『ユニヴァース』。それともう一枚あるんです。それはゼロ。数字のないゼロ番目のカード『ソース』というのがあります。『ソース』はゼロです。ゼロ枚目のアルバムは出せないから、次に続く数字がないんです。だからもう、表現出来る世界は、終わりなんじゃないかと思うんです」
「なるほど」
下尾辻は咳払いをして、頷いた。