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オルコンデリート(後編)

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「バンドも久坂さん自身も存在意義がなくなってしまって、全部終わらせてしまおうと思ったんじゃないかと」
口を塞いでいた向島が、唾を飲み込んで言葉を発した。
「でも、アルバムは昨日マスタリングが終わったばかりよ。まだ発売もされていないのに」
「関係ないよ。完成することが目的だったんだから。続くためには売らなきゃいけないのかも知れないけど、作るのが目的なら売れなくてもいいじゃない。久坂さんはそう考えた。と、俺は想像するけど」
「それじゃあ、カメモトはどうなの?今の話にはカメモトの存在は出て来ないけど」
「そこは私が推理してみましょうか~」
下尾辻は椅子の背もたれから身体を起こした。
「今のお話を聞いていて分かりました。こう考えるのが自然ですよ。最初から久坂さん、メンバーと一緒に死ぬつもりだったんじゃないですかね。人数分の薬物弁当が最初からあった訳ですからね、カメモトさんが来なきゃ久坂さんはあっさりことを果たしていたんですよ」
三棚井も向島も頷いた。
「そのつもりが、予定よりも随分早くカメモトさんが来てしまった。それであなた方に早く帰るように言ったんじゃないですかね」
「もしそうなら、薬物弁当を五人に食べさせずに済んだんじゃないかしら。自分が準備したものだったなら、何とかしてその場を回避出来そうだけど」
「何か止められない流れがあったんじゃないですかね~、部屋にすでに弁当があって、五つしかないから、君は自分のを買っておいで。みたいな流れにはなるでしょう~。まあ、私の言ってるのも、想像に過ぎませんがね~」
下尾辻は頭を掻いた。断言を避けた下尾辻を受けて、三棚井が続けた。
「居た堪れなくなって、久坂さんは逃げたんじゃないですかね。その場で一緒に死のうとも思ったものの、居た堪れなくなって逃げた。そして場を変えて、思い出の場所で薬物を飲んだと」
しばらく三人は言葉を失った。少しの間、沈黙が漂うに任せた。
「それにしても随分身勝手ね。ピカンテの本当の気持ちも確かめずに。そう思わない?」
三棚井に同意を求めたが答えない。下尾辻を見ると、再び目を閉じている。
「そんなの身勝手よ。全然身勝手。勝手に一人で死ねば良かったのに」
向島は自分に言い聞かせるように呟いた。またしばらく沈黙が続いた。