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オルコンデリート(後編)

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 久坂は新宿歌舞伎町の『ビヨンド』というライブハウスに、来月のライブの下見に来たと言って現れた。時間は十七時。店は普段なら、夜のライブのリハーサルなどで、多くの人が出入りしているが、昨日はたまたま音響と空調のメンテナンスの為に、深夜のクラブイベントのみが予定されていた。お店の事情を良く知っているはずのピカンテのマネージャーが下見というのもおかしいと、スタッフは感じたそうだ。しかし、ちょっと大掛かりな仕掛けがあると言われて楽屋に通した。すぐ済むということだったので、そのままスタッフは事務所に戻ったのだが、二十分経っても出て来る様子がなかったので、楽屋を覗いてみると、久坂が倒れていたということだった。
「そういう訳で、そのまま救急車で病院に搬送されました。現在、意識不明です~。昨日の五名の件、事件として早めに報道していれば、こうはならなかったのかも知れませんが~、確証が薄かったので」
下尾辻は頭を掻いた。
「ところで、三棚井さん、昨日向島さんからご報告を受けたのですが~、インタビューの最後に久坂さんが気になる発言をされたそうで~」
「ええ、犯行をほのめかすものかどうか分かりませんが、『早めにお引き取り下さい』と」
「帰るように促した訳ですね~」
「ええ」
そして、三棚井は先ほど向島に話したDVDとブログのことを、下尾辻に伝えた。久坂が現れた場所が、新宿であることを予見出来たと説明した。
「なるほどね~。思い出の場所に帰って来たと。そういう訳ですね~」
「そうなんじゃないかと思うんですが。全く釈然としないのが、カメモトさんの存在なんですよね」
「同じバンドに所属していない方ですね~」
「ええ、カメモトさんに関しては全く謎です。久坂さんがバンドに殺意を抱いたその理由も分からないんですけど」
三棚井はチラッと向島を見た。向島は小さく頷いた。
「刑事さん、一つ質問してもいいですか?」
「どうぞ」