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オルコンデリート(前編)

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「不自然な発言だったけど、こういう事態は予期してなかったなあ」
「久坂さん、どこに行っちゃったのかしら」
「さあ」
「どう考えても、久坂さんが疑わしいわよね」
「そりゃあね。居なくなってんだもん。怪しい感じがするよね」
隣の席の恋愛相談は、切実なものであるらしい。一方の女の子のすすり泣く声が、三棚井の耳についた。どうやら公然と浮気をされて居た堪れないらしかった。相談を受けている子は、「そんな男止めてしまいなさい」と、怒り調子で諭している。泣いている子は「でも」「だって」と言って未練を露にしていた。三棚井は隣の会話が耳に入って仕様がない。聞かないように注意して、向島との話を続けた。
「今回の件は、タイミングが良くも悪くもあるよね」
「タイミング?悪いタイミングだったというのは分かるけど、良いタイミングだったというのはどういうことかしら?」
「悪いタイミングだったと言えば、アルバム発売前だよね。何でこんな時にって。良いタイミングだったというのは、アルバムが完成していることだよ。アルバム完成前なら、なおのこと気の毒だ」
「そうね。出来上がったことは幸いだけど。強いて言うなら発売後でも良かったような気がするんだけど」
「そんな風に考えるとさ、タイミングは選ばれたものの可能性もあるよね」
「どうかしらね、単なる偶然じゃないの」
「そうかねえ」
「偶然よ。考え過ぎなのよ、あなたは」
「考え過ぎじゃないよ。一言多い」
三棚井は向島の返事が気に入らなかった。
隣の席では、相談役の子がいよいよ声を荒げて剣幕になっている。「あたし頭に来た、一言言わないと気が済まない」と当人より怒っている。「あんた電話貸しなさいよ、一言言ってやるわ」そう言って相手の電話を取り上げていた。三棚井は益々気が散って仕様がない。
「いずれにしても、久坂さんにメリットはなさそうよね。もしも彼女のしたことなら」
「そこが疑問だよ。タイミングがいつでも、彼女にはメリットはないはず。何もいいことは、ないと思うけど」