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オルコンデリート(前編)

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矢継ぎ早に告げると、社長は電話を切った。すぐに向島に電話をしたが、すでに電源を切っているらしく繋がらない。明日までに作ると半分約束した原稿は、これで一週間後が確実になった。それよりも、せっかくインタビューの時にもらって来たピカンテの二十周年記念DVDを見る時間がなくなった。「今と昔を見比べようと思ったのに」。三棚井は心の中で呟いた。
 署に着くと、すでに向島が聴取を終わって、待たされている様子だった。
「何事?」
「私が言うよりも刑事さんの口から聞いた方が正確なんじゃない。すぐ終わると思うわよ」
促されて取り調べ室に入った。
「三棚井さん、お休みのところ、すみません~。私、刑事の下尾辻と申します。よろしくお願いします~」
「よろしくお願いします」
下尾辻は軽く会釈をした。やましいところはないが、いざ刑事と向き合って三棚井は緊張した。手のひらにじっとりと汗をかいていた。初老の刑事下尾辻。柔らかい物腰ではあるが、体付きはがっちりしている。白髪混じりの短髪に、黒縁の眼鏡が映えた。
「え~、早速ですが~、三棚井さん、今日、ピカンテというロックバンドの皆さんがいらっしゃるスタジオに取材に行かれたと思うんですけど、間違いありませんか?」
「ええ。行きましたけど。何かあったんですか?」
「え~、詳しくお話をしますと~、三棚井さんと向島さんが取材に行かれた後にですね~、ロックバンドの四名の皆さんと、後からお見えになったカメモトさんが昼食後に倒れられましてね。それで、病院に担ぎ込まれたんですよ~」
「そうなんですか。何で?」
「順番にお話しますから、聞いて下さい。で~、マネージャーの久坂日見湖さんが連絡の着かない状態でして~」
「え、そうなの?何で?」
「まあ、お待ち下さい。まだ私、喋ってますから~。問題はここからなんです。スタジオでは同じ弁当を、業者に頼んでいて、五名以外は食後に倒れていないんですね~」
「そうなんだ。だから、何で?」
「そうです。何で?なんですよ」