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しーちゃんのこと

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辞めるとは書かれていなかったが、僕はなんとなく辞めるんだろうと察した。頃合がちょうどいいのだ。彼女が受ける予定の資格は国家資格で、来月試験があるって言っていた。きっとその試験に備えて、店を退くのではないだろうか。お別れにはちょうどよかったのだ。

 そして、一カ月ぶりにお店を訪ねたのだが、非常に残念な報せを聞くこととなった。
「しーちゃん、もう辞めるんでしょ」
何となく話を切り出すと、彼女はいつもと変わらぬ明るい口調で、
「うん、来月試験だしね」
「やっぱり」
僕も次いで、自分の事情について話そうとした。ところが、
「実は先月ね、倒れたのね。友達と旅行してた途中で。関西の方に行ったんだけど、泊まった旅館で倒れちゃって、救急車で運ばれたの。それでこっち戻って来てから改めて病院に行ったんだけどね、お医者さんが結構さっぱりした人で、診断結果を何でもない顔していうんだよ」
変わらず明るく話すしーちゃん。その口調からはまったく暗さは見えない。
「お医者さん、なんて言ったの?」
「うん、リンパ腫だって」
きっとお医者さんは、今、しーちゃんが言ったみたいに何でもない顔して話したのだろう。僕も思わず聞き逃しそうになった。「リンパ腫」という言葉を。
作品名:しーちゃんのこと 作家名:佐藤英典