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マスクホン少女

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―土手―
この学校の校庭のわきには土手がある。
こんな校舎から離れた場所に来る物好きなんかいない。
影になってるし目立たない。
今日はここでご飯を食べよう。


マスクをとる。
ヘッドホンはかけたまま。
iPodから音楽を流す。
曲が流れる。
弁当を開ける。


この動作は何処に言っても変わらない。
弁当をつつきながら歌う。

パンクを。

弁当が空になる。
マスクをつける。
昼休みも終わる。

そしてこの至福の時間も終わる。

ここはいつも通り。

でも一つ違う。
いや、昨日通りと言うのか。
またあの男子が立っている。

今日は汗だくだ。
探してたのかな?

ヘッドホンを外す。
今日は話を聞いてあげようじゃないか。
…何様よって。

「何よ」
「お!今日は反応が良いねぇ」
「それより早く用件」

私が急かすと彼は慌てた。

「あ、ごめん」
「それで?」
「昨日話してた事考えてくれた?」

昨日?
…あぁ、声をくれとかってやつか。
さっぱり意味がわからなかったんだよね。

「あなたは何?人魚姫に出てくる魔女?」
「いや、男なんだけど…」
「声をくれなんて言われても無理よ」
「…あぁ、それで魔女ね」
「意味がわからなかったんだけど」
「あれ?でもその後、ちゃんと話したんだけど」
「何を?」
「だから、これからバンドを組もうと思ってるんだけど…」

は?
…この流れは、もしや。

「ボーカルを頼みたいんだ」
「嫌」

すぐに立ちあがる。

「え?即答?」

iPodに手を伸ばす。

「もう少し考えてみない?」

返答するのもめんどくさい。

「逃げんの?」

イラっときたけど、何だか呆れた。
歩きだす。

「諦めないから!」

そこまで聞こえた。
曲が流れだす。


―教室―
机に向かう前に玲のもとへ。
ちょっと訊きたい事があった。

「ねぇ」
「ん?どうした?難しい顔して」
「あのさ」
「何?」
「ナンパって普通どうやんの?」
「…は?」

玲に一通り事情を話した。
こんなに自分から話すのも久々だ。
玲は終始笑っていたけど、真剣に話を聞いてくれた。

「…ふぅん」
「それでさ、どうしたら良いと思う?」
「やっちゃえば?」
「…そんな簡単な」
「もしかしたら世界が広がるかもよ?」

世界が広がる。
そうかもしれない。

私が生きている世界は両手で届くぐらいの範囲しかないといつも思ってる。
それほど考えは狭く、想像力は乏しい。
そう自負して、認めながら生きている。

でも結論はまだ出さない。

私はあまり声を出したくない。
私の声のせいで、今の私がいる。
ボーカルとか、声を出すのがメインだ。
せめてドラムとか他のパートで誘って欲しかった。
…出来る楽器とかないけどさ。

とりあえず、もう少し考えよう。
作品名:マスクホン少女 作家名:koma