マスクホン少女
『声綺麗だね』
恥ずかしがらずに、ある男子が私に言ってくれた。
「もっと聴かせてよ」
「…今授業中なんだけど」
周りの視線が痛い。
先生までがキョトンとしてこちらを見る。
「あ、ごめん」
「いいよ」
「じゃあ勝手に聴くからさ」
「…」
歌を歌うのは好き。
だから音楽の授業は好き。
合唱とか特に。
皆と一緒に歌うとか何か素敵な気がした。
「今、別れの時〜」
皆にやにやしながらこっちを見る。
顔が熱い。
顔が赤くなる。
恥ずかしかったけど、それ以上に嬉しかった。
私の、この声を、綺麗だと言ってくれた。
相変わらずクラスメイトは皆にやにやしていた。
でもその中に一人だけ笑っていない女子がいた。