朧木君の非日常生活(10)
『鎌鼬村へようこそ!』
そう書かれていた。
辛さから現れる明るさ。
無理して作り出した明るさ。
そういった感情かこの看板には滲み出ていた。
夜目の効いた俺には分かる。
「さぁて、朧木くん。行こうじゃないか。鎌鼬村に」
蜻蛉さんは不敵な笑みを浮かべながら言い、躊躇せずその領域へと足を踏み入れた。
勿論、俺は全力で躊躇しながら蜻蛉さんの後を追った。
「実に楽しみだね、朧木くん」
「楽しみなんかじゃねぇよ!」
この状況で楽しめるあなたは異常だ!
そう思った瞬間。
背筋が凍りついた。
作品名:朧木君の非日常生活(10) 作家名:たし