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朧木君の非日常生活(10)

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「さぁ、朧木くん。ここからが地獄の始まりだ。至極ではなく地獄だよ」
「ここからもなにも、俺は初めから憂鬱だったよ」
「なめちゃいけないよ、朧木くん。鎌鼬村はここからバスで二時間、徒歩で二時間、走って一時間、最後に歩いて一時間はかかるんだよ」
「遠いな!」
鬱過ぎるんですけど。
もう、嫌だ。
本当に帰りたい。
お母さんの暖かい飯が食いたい。
「それはそうと朧木くん。鎌鼬村に行くにあたって少しくらい知識をつけようか」
確かに。
鎌鼬村を知っていると言っても、その一片を知っているに過ぎない。
だって知りたくもないし、触れたくもないし、気にしたくもないことなんだから。
「━━鎌鼬村。別名、首括村。この場では鎌鼬村と表現させてもらうよ。この村は、今から行く金縛沢という地域の山中に位置する村だ。山中に位置 すると言っても、入り口は一つしかない。周りは山だから、この一つの入り口からしか入れないんだ」
あからさまに意味深な作りになっているんだな。
「村人は老若男女五十人程度だったらしいね。村、というより『集落』という表現の方が正しいのかな? それで、だ。何年も前に村人達が忽然と姿を消した訳だ。いや、正確には━━変死。死んだ理由なんてない。変死だ。鎌鼬村は当時無名というより、あまり人々に認知されていなかったんだ。要するに知る人ぞ知る村だったらしいね」
へー、同じ国内でもそういうのってあるんだ。
「そして、国はこの事実を隠した。いや、隠そうとした。それほどまでに不可解な死だったんだろうね」
国が隠した・・・・・・何でだろう。
何故、事実を隠したんだろう。
「と、言ってもこれが本当に事実かと問われれば僕も、『そうだよ』と即答することは出来ない。それほどまでに曖昧な情報で、統一性がなく、まとまりがないんだ」
だから、と蜻蛉さんは続け一拍置いた。
「解決出来るのは僕しかいない」
・・・・・・そうかな?
あなたは国家を越える存在なの?