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かいごさぶらい
かいごさぶらい
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かいごさぶらい<上>お茶の間とヘルパーさん

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「まだ、ねむたいのに、さわりなっ!」当然のことだが母の機嫌は悪い。

「そんなこと言う~ても、もう8時やで~、早よ起きな、学校いかれへんやんか~」と、呟く私の声が。

「しらん!いけへん!あっちいきんかいな!」三連発ではじき返された。母は地獄耳なのだ。

「ほんだら、もう、ちょっと寝るか~?」

「かぶせてー、さぶいねん!」母に、もう一枚毛布を掛けた。

「はいはい、ちょっと、煙草吸うてくるからな~」と言ってベランダへ逃げることに。

「あいよ」と、母。リビングから、ベランダへ、灰皿と腰掛が置いてある。裏道の三叉路の道路。高校生、中学生、小学生らが行き交う、この裏道は通学路になっているのだ。

「皆さん今日も元気そうやなー」と、眺めていた。網戸越しにかすかに母の声が聞こえた。

「ね~さん、ね~さ~ん」と、母の声が聞こえた。

「起きたんか~?いま、煙草吸うとってん」

「なんや?そこにおったんかいな~」おトイレ、洗顔、身支度、食事の用意、今日は入浴のある日だから、バスタオルや着替えの下着等、それにゴミの日だ。よたってはいられない。息つく間もなく私は動く。

「なにばたばたしてんのん!」そんな私を、母はしっかり見ているのだ。

「うん、もう、終わりやで、お袋ちゃん、食べたか~」朝食が残っている。

「ま~だ」(この余裕には勝てんなー、と何時も私は思う)。

「もう直ぐ、迎え(デイ施設の送迎者の方)に来はるから、食べたら薬飲もな!」

「いらん!」

「大事な薬やで、お袋ちゃん、これの、お陰で、90うん歳まで、元気なんやでぇ」

「そんなん、なってへんわーっ!」と母。

「ふ~ん、ほんだら、お袋ちゃん、歳、なんぼやのん?」

「う~ん、、、30、、、なんぼぐらいちゃうかな~」

「はっはははーっ、お袋ちゃん!、それやったら僕より、歳下やんか~」

「あんた、なんぼやの~?」

「もう50うん歳やで!」

「へぇー、そんなんなったん?いつからや!」ニコニコしながら、母が聞く。今日はご機嫌良くデイに行ってくれそうである。何の変哲もない、言葉を交わすことだけで良いのだ。




   「ひとが、きいてんのに、あんたもしらんのんかいな!」茶の間、その(5)

2005/6/24(金) 午後 0:42
某月某日 普段から、テレビは滅多に見ないし、集中しない母だが、時たま1~2時間、私に聞きながら、見る時がある。

「はっはははー、にいちゃんこのひと、おもしろいでー、みてみぃ」

「どうしたん?」と私もつき合う。

「わたしみてなー、わろ~てんねん!」

「えらい、お婆さんが、見てるわ!、思うて、笑ろ~てんのんちゃうかー?」と、母を茶化した。

「そやろなー、ははははっー、まだみとるねん!だれやのー?」悠然と受け流す母。(子供は親には勝てません)。

「漫才師?、ちゃうかな~?、最近よ~け、いたはるからな!」

「どこのひとや?」

「う~ん、どこの人かな、知らんけど、東京に住んでるんちゃうか?」

「ふ~ん、いつきたん?」

「最近ちゃうか?」

「ここどこやー?」

「そら、東京やろう?」

「なんで、わかるん?」

「これな!、東京の番組やからな!」

「あのひと、だれや?わたし、みよったわ!」

「これ、お袋ちゃん、コマーシャルやんか!」

「なんの、こまーしゃるや?」

「うん、、、、もう変わってしもたから、分かれへんわ」

「なんで、こんなこと、してるん?」

「まあ、コマーシャルやから、何でもやらされるんやっ」母がTVを眺めている間は、このような会話が延々と続く。私が新聞を見ながら、生返事をしようものなら。

「にいちゃん、これだれやー?」

「うん、、、、、、、、、、ちょっと分かれへん」

「ひとが、きいてんのに、あんたもしらんのんかいなー、あほ、ちゃうかー!」鋭い。生返事は直ぐにばれるのだ。

「うん、、、ご免ご免、ちょっと、見てへんかっただけやんか~」言い訳をする、小心者なのだ。

「みときんかいなー!」母の声は、凛としている。(お袋ちゃん、えー度胸してる。丹田が座っとるわ)。




   「わたしを、ころすつもりやろー!」茶の間、(番外)

2005/6/26(日) 午後 0:00
某月某日 介護しなければならない時と、看護しなければならない時があることを、私は母から教わった。この辺を見極めるまで、私も随分と時間がかかった。まだ見極めてないことを、後で知ることになるのだが。そろそろ寝る時間だ。

「もう、かえろうー?」と母。

「うん、どこへ、帰るん?」

「00やんかー?、わたしのイエやっ!」

「お袋ちゃんの家、此処やで~」

「こんなとこ、ちがうわー!」

「なに言うてんのん、ず~っと、此処で、僕と一緒に暮らしてるやんか~」

「へぇー、わたし、こんなとこでねるんかー?、ねたことないで」ここで、私は、10年前に阪神淡路大震災で、我が家が被災し、ここに移って来た経緯をゆっくり母に聞かせる。何度も何度もだ。だが、母は。

「あんたっ、わたしにはなー、00にイエがあるんやでー、もうかえりたいねん、それも、わからんのんかー!」

「そやからな~、お袋ちゃん、よ~聞きや~」と、私は、同じ話を繰り返すのだ。

「へー、しらんでー、わたしは、こんなとこで、ねられへん、ねたことないっ!」

「お袋ちゃん、今日学校(デイ施設)行ったやろ~、何時もな、此処から、通ってるねんで~」

「がっこう!、そんなとこ、しらん、いってへんわー、!」こんな、やり取りがしばらく続く。

「なあ、そやから、お袋ちゃんと息子の僕と、此処で、こうして、一緒に暮らしてるねんで~」

「あんたぁー、むすこっ!、しらん、あんた、よそのひとやろー!」母の顔が険しくなる。こうなると、もう、介護ではなく、看護しなければならない。

「分かった、お袋ちゃん、ご免な~、明日、一緒に、家に帰るから、今日はもう、遅いし布団も敷いてあるし、ここで泊まろう」

「なにが、かえろーや、わたしを、ころすつもりやろー、てぇーはなしんかいなー」行こうとする母を両手で止める私。

「ご免な~、明日、絶対に00の家に帰るから今日は遅いから、此処で、辛抱して~な」

「うそついたら、あかんねんでー!」と母が私を睨む。介護と看護。どう、違うのかは、かなり難しい。表情を見るのが一番だと、私は思っているのだが。




  「きやはったわー、きやはったわー、わ~うれしい~」ヘルパーさん、その(1)

2005年/6/27(月) 午後 0:25
某月某日 ケアプランを立てる作業は大変な仕事である。介護度に応じて、それぞれ異なる家庭の事情を抱えた介護者や、その家族の「意」を汲まなければならないのだから。

「今日は稽古に00まで行ってくるわな!」

「ふ~ん、きょう、いかなあかんのんか!」

「うん、その代わりな~、ヘルパーさんが来てくれはるからな!、お袋ちゃんは、何~んも心配せんでえ~で」

「ヘルパーさんて、だれやのん?」

「何時も、お袋ちゃんのこと、見てくれてる人や、顔見たら分かるわ!」