有馬琳伍氏の悲劇、もしくは24人の客
T氏の冒険とカタコンベ
鷹司京介は、某氏に教えられて、あるカタコンベ来ていた。お宝好きの考古学者は、神秘と謎が好物だった。ゴシック調のカタコンベは、天使やら怪物やらのレリーフで埋め尽くされていた。そこに、尋ね人はいた。18世紀の貴婦人のような豪奢な衣装を着た十くらいの少女が、京介の事を待っていた。少女はオルランドゥ公爵夫人と名乗り、カタコンベに置かれた黒い棺を指差して、「お探しの品です」と、言った。にっこり笑った唇の端から見えるは、尖った牙。棺の蓋を開けてみると、そこには彼が探していたものが眠っていた。祖父の兄が書き残した日記から、オルランドゥ公爵夫人の元にいると予測していたのである。曽々祖父の兄が醜聞にかこつけて秘密結社である「A progeny of Cain」から隠した108の鍵の番人。人魚の肉を食べたらしいと言うだけあって、当時の姿のまま。カタコンベは謎と神秘に満ち溢れていた。しかし、番人は残念な事に五年前から眠り姫。これでは、「A progeny of Cain」も欲しがったと言う謎と冒険に満ちた108の宝を拝む事すらできない。鍵を手に入れる方法は解っている。鍵を秘めている扉を開くには鍵穴の、鍵が必要。さて、どうするか。うーん、と京介は暫く考え込んで思いついた。この眠り姫は、昔従兄弟から聞いた夢の少女とそっくりだ。それで、従兄弟と言えば、従兄弟自身には教えた事はないが、自分は知っている秘密がある。たぶん、おそらく反応してくれるに違いない。うん、我ながらいい考えじゃないかと自画自賛し、京介はオルランドゥ公爵夫人にここから閼伽無市までの郵便料金を聞いたのであった。おい、ゆうパックで送る気か。
作品名:有馬琳伍氏の悲劇、もしくは24人の客 作家名:ツカノアラシ@万恒河沙