小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ツカノアラシ@万恒河沙
ツカノアラシ@万恒河沙
novelistID. 1469
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

有馬琳伍氏の悲劇、もしくは24人の客

INDEX|20ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 

そうだなぁ。坊っちゃんは、男にしとくのが勿体ないくらいお綺麗だったな。股間に大事なモンが付いてなけりゃ、女と言っていい程だね、身体も顔も。幼い頃は病弱だからと、坊ちゃんの母上様が坊ちゃんに女物の着物を着させていましたし。アタシがお屋敷に上がった頃は、坊ちゃんをてっきり可愛いお嬢さんと思ってたよ。母上様がお亡くなりになった後は、男物の衣服も着るようになりましたが、ずっと物言いは幼女のようだったなぁ。あんな事さえなければ、案外立派に育ったのかもしれんがね。ああ、あの医者の話だったな。あの医者は、男振りが良くてねぇ。女中達には大人気の野郎で、一度は後ろから蹴ってやりたいくらいの男だったさ。それが、ある夜にな、アタシは見てしまったんですよ。いやいや、これ以上は、アタシの口からは、なかなかに口憚るんだがなぁ。(彼はにやにやと下卑た笑みを見せる)おや、いやいやこれは、ありがたいねぇ。(札束を財布に仕舞う音がした)あの日は、奥様と旦那様と上の坊ちゃんが、ご旅行とかでお屋敷にはヒトがいない日だったねぇ。アタシはたまたま、用事があってお屋敷に戻ったんだけど、お屋敷には留守番をしている筈の坊ちゃんがいないので、アタシはおかしいと思いながら庭に出たわけですよ。すると、奥の方で何を言っているのか聞き取れないが坊ちゃんらしき声が聞こえるので、そっちの方へ行ったのさ。そしたら、庭の奥に東屋で坊ちゃんが東屋の柱にすがって、頬を紅潮させ、何かを耐えるかのようにわなわな痙攣していたのさ。アタシゃ、てっきりいつもの発作が起きたかと思ったんだが、耳を澄ますと、坊ちゃんが医者の名前を連呼してるので、これはおかしいなと隠れながら正面に寄ったら、あなた、何を見たと思いますか。そう、そこでお二人は鶏姦してなさってたのさ。初めは医者は坊ちゃんの着物の間から下肢の間に頭を突っ込んでいてな。恐らく医者は尺八でも吹いていたのだろうよ。坊ちゃんがいやいやでもするように首を振りながら、果てなさると医者は、坊ちゃんの着物の端から手を入れて、坊ちゃんの大事な所をしごきながら、後ろを突いてなさっていたよ。医者のなすがままの坊ちゃんは、何度も何度も突かれながら、悩ましげな顔をしてこっちまで達ってしまいそうないい声で鳴いていたよ。誰も見ていないと思っているからか、そりゃあ春画も真っ青な大胆な媚態でね。ふふ。出歯亀のように、散々鑑賞させてもらったよ。ええ、アタシが悪趣味だって?お前さんだって、その場にいたら、アタシみたいに動けなくなるとと思いますぜ。坊ちゃんは、果てるときにはひくひくと白い足袋を履いた足を反らしながら震わせるんだよ。頬を染めて眉を顰めたその姿は、こっちまでお相伴に預かりたい位だったねぇ。下手な遊女より、ぞくぞくっときたよ。ほんとに。でもまぁ、確かに坊っちゃんは、美女と名高い奥様とお嬢様に似て、お綺麗な方だったからねぇ。女好きと噂のあった医者が血迷うのも仕方ないさ。それから、すぐかな坊ちゃんと医者がいなくなったのは。アタシはすぐに、体面大事なS家が坊ちゃんも医者も亡き者にしたんだと思ったよ。S家は色々とあるからねぇ。あの妾上がりも色々やったが、結局大事な息子が死んじゃあねぇ、水の泡ってとこさ。つめが甘いよなぁ。で、S家は坊ちゃんの姉君の水乃様が継ぐことになった次第さ。今頃、妾上がりも墓の下で地団駄踏んでいるだろうよ。ああ、くれぐれも、S家にはアタシが話たなんて言わないでおくれよ。
(乳母乙の話)
あたくしは、そもそも坊ちゃまと水継様のお姉さまのお母様の付き添いでしたの。水葉様とは、立場は違いましたけど幼馴染でしたのよ。水継様も不憫な方ですわ。お母さまがお亡くなりになったあと、あの妾がのうのうと後妻に納まって。あの妾は、S家をどんな手段を取っても息子に継がせようとして、あの噂をでっちあげたのですわ。水継様は次男と言っても、正妻のお子様ですからね。何の噂ですって。水継様とお医者様の間に、男色の交わりがあったと言う噂ですわ。ええ、その庭師があの妾上がりにお金を掴まされて、あることないことべらべらと。あら、貴方も庭師からお聞きになりましたの。ええ、そんな話は嘘八百ですわ。全く本当に口惜しゅうございます。あの女は、そりゃあ鬼の首でも取ったかのように言い立てて、旦那様が水継様を家から追い出すように仕向けたのです。でも、そこまでしてもあの妾の息子が、S家を乗っ取る事はできませんでしたわ。水継様がお屋敷から追い出されてから、すぐに変死されて。その後、水継様のお姉さまの水乃様が婿養子を取られて後を継ぎなさりました。水継様は欧州へ遊学と言う名目でお渡りになりましたが、今は消息不明になっておしまいに。いったい、今頃どうなされているか、心配ですわ。変死の理由ですか。詳しい事は解りませんが、何でも体内の血液がどこかへ行ってしまったらしいとは聞いておりますが、あまりに変な話なので信じておりませんわ。
(女中甲の話)
あたし、見てしまったんです。上の坊ちゃんが、お医者様を殺すところを。あたし、あの時は蔵掃除をしていたら、取り残されてしまったんです。そしたら、上の坊ちゃんとお医者様が口論しながら蔵の中に入ってこられて。すっかり、あたし出るタイミングを逃してしまったんです。そしたら、いきなり上の坊ちゃんがお医者様を刺されて倒れてしまいましたの。その後、二人を追うようにすぐに奥様がいらっしゃって、一緒についてきた庭師にお医者様の死体を始末するように指示されたんです。ええ、何故庭師がそんな事手伝うのかですが。口さがない古参の女中は、庭師は奥様と出来ていると言ってましたけど。それじゃないかしら。あたしは、奥様と庭師がいなくなってから、漸く蔵から出ましたけど、それからお医者様の姿は二度と見ることはありませんでしたわ。やっぱり、どこかに埋められてしまったのでしょうか。その後、奥様は水継様とお医者様が出来ていたと言う話を旦那様にして、奥様の話を鵜呑みにしてお怒りになった旦那様は水継様を勘当されたのです。ほんと、これが死人に口なしって言うのかしら。ああ、そういえば、別の子が言っていたけど、上の坊ちゃんのお葬式のときに棺桶の中が空っぽだったって。ほんとかしらね。ほんとうだったら、ご遺体はどこに行ったのかしら。
以上が、私が聞ける範囲での話だったが、いまいち皆言うことが違うので、結論は藪の中になってしまった。私の力不足を禁じえない結果になったことが残念である。