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ツカノアラシ@万恒河沙
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有馬琳伍氏の悲劇、もしくは24人の客

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Q姫の塔と青髭


 お待ちしています、貴方。
 私は、青髭の幼妻。お待ちしてます、貴方。ここは、世界の果ての高い塔。私は、青髭によって塔に閉じ込められています。お待ちしています、貴方。囚われの私を救ってくれる日を。あの日、あの時、目を交わした時、貴方の目は私への愛を語り、私を青髭の手から救ってくれると約束してくれましたね。私が落とした、ポッキーの箱を優しく拾ってくれた貴方。そのとき貴方が私を愛していること、そして私が貴方を愛していることがすぐ解りました。秘すれば花とは言うけれど、あのまま私を攫ってくれたら良かったのにと思います。でも私は信じています、私をこの塔から救い出してくれることを。白馬に乗ってやってきてくれる事を。そして、私たちは物語の最後のように、いつまでも、いつまでも幸せに暮らすのです。貴方が来てくれると考えるだけで、天使がファンファーレを鳴らします。いつかの日のために、いつでも貴方と暮らす用意はできてます。
 お待ちしてます、貴方。貴方がここにこられたら、すぐ分かるように、貴方のおうちに盗聴器と隠しカメラを用意しました。貴方のおうちは、あの日貴方が連れて行ってくれましたね。どきどきして、まともに話せない私は、貴方の五メートル後を、こっそりとついていくのが精一杯でした。近所の方から、貴方が最近奥様に逃げられた事など貴方の事をお聞きしました。貴方は私を愛してたから、奥様に逃げられたのですね。この運命の日のために、奥様は貴方のもとから逃げてくれたのですね。私は毎日受信機で貴方のお顔を拝見します。受信機から流れる貴方の声を聞くたびに私の胸は高鳴ります。カメラ越しに見える貴方の目はとても優しくて、毎日無言で私への愛を囁いて私を勇気付け、慰めてくれましたね。
 お待ちしてます、貴方。いつになったら、ここに来て下さるのですか。いつになったら、私の耳元で愛を歌い、青髭を殺してくれるのですか。お待ちしてます、貴方。何故、あなたのおうちには、私ではない別の少女が住んでいるのですか。私と言う、愛する人がいるのに。何故、少女は貴方のおうちを自分の家のように振舞うのですか。何故、貴方は少女を追い出してくれないのですか。お待ちしてます、貴方。今は解っています、あの少女は極悪非道な青髭を油断させるための隠れ蓑なのですね。今日も青髭は、この塔の扉を開けるように要求します。でも、私はいつかやってくるはずの貴方のために清い身体を守っています。
 お待ちしています、貴方。何故、貴方は私でない少女と笑っているのですか。何故、貴方は私でない少女と接吻しているのですか。何故、貴方は時折少女の薄い胸の突起を弄ったり、耳を咬んだり、スカートの中に手を入れたり、頭から被ったまま出てこないのですか。何故、その度に少女は潤んだ瞳で頬を紅潮させ、声を上げて身悶えているのですか。少女の甘い吐息が耳につきます。
 お待ちしてます、貴方。今日、盗聴器と隠しカメラを増やしました。もっと、貴方のことが解るように。貴方の全てが分かるように。お待ちしてます、貴方。何故、貴方の腕の中には少女がいるのですか。何故、貴方は少女を愛撫を与えるのですか。何故、貴方は私と貴方の寝台の上で、少女と交わっているのですか。少女は、女装をした少年なのに。今日、寝室につけた盗聴器とカメラを壊しました。誰か私と貴方のことを妬んで、悪い電波を送っているに違いません。
 お待ちしてます、貴方。お待ちしてます、貴方。お待ちしてます、貴方。お待ちしてます、貴方。お待ちしてます、貴方。貴方が来ないので、待ちきれなくて、私は青髭を縊ってしまいました。これも貴方への愛ゆえです。お待ちしてます、貴方。お待ちしてます、貴方。今日は貴方のおうちに来ています。あまりに、助けに来てもらえないので来てみました。特別に作った合鍵で、おうちに入りました。人気のないがらんとしたおうちでした。私は貴方をお待ちするために、寝台の上で丸くなりました。貴方を殺すために。私も一緒に死にましょう。あの世で、幸せに暮らすのです。どうやら、あの少女のような少年の魔手から、貴方を救うのが私の役目みたいです。もうすぐ、貴方は帰ってくるに違いません。ああ、扉が開く音がします。もうすぐ、ここにくるのでしょう。そして、寝室の扉が開きます。お帰りなさい、貴方。