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ますら・お
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novelistID. 17790
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アオイホノオ―終末戦争―

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「タオルありがとうございます。レインコートか何かないかと探したんですが全部出払っちゃってたみたいなんで資料を袋に包んでそれだけできちゃいました。傘は両手が塞がっちゃってるんで使えないし……」
「ご苦労さん。で、この資料は一体何なんだ?」
タオルを受け取るとガルシアは女性に尋ねる。
「先ほど小波優上級曹長のA.M.A.T.A“アカツキ”が届いたのでそれの資料や取り扱い説明書みたいなのを全て持ってきました。」
「ようやく届いたんですか。結構遅れてたみたいなんで心配しましたよ。」
「すみません小波上級曹長。輸送車に積まれていた他の荷物にデリケートなものがあったのに加えてこの雨なんでどうしてもスピードが出せなくて遅くなってしまったようです。」
「なるほど、なら仕方ないですね。この雨の中お疲れ様でした。帰りにはこの傘でも使ってください。」
「ありがとうございます。後、A.M.A.T.Aは整備場の方に置いてありますので寄ってくださいね。」
女性は一礼すると傘を受け取り出て行った。
「優、ついに新しいのが来たのね。」
陽菜が楽しそうに言う。その後ろでガルシアやトリス、鷹野の三人は今すぐに“二人”で見に行けとでも言いたげな感じでニヤニヤしながらこちらを見ている。
またこの人たちは何を考えているんだよと言いたくなったがそこは堪えた。内心新しいパワードスーツが届いて嬉しかったし、陽菜と二人の時間も好きだったからだ。もしかしたら今の俺の顔は鏡を見ると凄いニヤニヤしているのかもしれない。
「さ、行こっか!」
そう言って優の腕を掴むと陽菜は歩き出した。
「ちょっ、そんなに引っ張んなくても……」
大きな傘に二人で密着しながら整備場まで歩いていく。途中ですれ違う人々の視線が痛かったが今の気持ちと比べればそんなものは気にならなかった。
(デートしてるみたいだなぁ……)
心の中で優は呟く。
もし、静かな日常が戻ってきたら普通に色々な所を二人で歩いてみたいなと思う。だからこそ、一刻も早くこの戦いを終わらさなければならない。
そう決心しつつ整備場への道を歩いていった。





二人で色々と話しながら整備場に着くとそこにはビニールがかけられたパワードスーツが置かれていた。ビニールには小波上級曹長へとの張り紙。
「これが俺の新しいパワードスーツ……」
第3世代A.M.A.T.A“アカツキ”。人類のE.Lに対する新たな力となりこの闇の中を歩いているような戦争を終わらせる存在になることを願って暁(アカツキ)と名づけられている。
最先端の科学技術を惜しみなく投じ、加えて今までのE.Lとの戦闘データがフィードバックされているため、第2世代までと比べて飛躍的にその性能が向上している。
かけられているビニールに優は手をかける。そして一気にそのビニールを剥がす。
ビニールで出来た羊膜を破り、出てきたパワードスーツは産声の代わりにその身で照明の光を反射させ鈍色に輝く。対プラズマコーティングがされているためその光にはかすかに蒼い光が混じっている。
複雑に絡み合った光沢を放つパワードスーツはまるでこれからの戦いを愉しみにしているかのようにも感じられる。優はその光に魅了されていた。そのまま手を伸ばしその機体に触れる。返ってくるのはひんやりとした冷たい感触。
「凄い、これが俺の新しいスーツか……」
その様子を傍で見ていた陽菜は口を開いた。
「だけど前みたいな無茶しないでね。私はもう仲間を失いたくないの。ねぇ、優?」
「大丈夫、生き残るって決めたんだ。そう簡単には死なないさ。」
手を陽菜に握られる。その小さな手は少し震えているようだった。もしかしたら今の光景が何か死神との契約の様に見えたのかもしれない。心配させたのなら申し訳ないと思いつつ陽菜の頭を撫でた。
安心したのか陽菜の手の震えは消えていた。もう少し撫でてやると気持ちよさそうに目を細める。
そんな陽菜の様子を見つつ優は左腕に巻かれている包帯を見つめる。


―――もうこんな無茶はできないな、と優は思った