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ますら・お
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アオイホノオ―終末戦争―

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第二話「生き残る」



雲一つ無く綺麗に澄み渡っている青い空。
しかし、地上ではそれと全く逆の惨たらしい殺し合いが続けられていた。
人類側は徐々にE.L側に押し切られようとしている。破壊された建物を使い防御線を築いているが敵の数が多すぎて突破されてしまうのも時間の問題だった。
「抑えきれない!!ぐああっ!?」
兵士の一人が飛んできたプラズマ弾にその身を焼かれ倒れこむ。仲間はそれを気にしている暇などなかった。奴らは止まるということを知らない、少しでも攻撃の手を緩めればこの防衛線を押し切られてしまう。
「来るぞ!!」
羽のついた個体が速度を落とさずに兵士達の集まっているところに半ば突っ込む形で着地。そのまま腕の鎌を振り上げ兵士を一人切断する。耳を塞ぎたくなるような叫び声を上げながら抵抗する兵士達を一人また一人と切り刻んでいく。
しかし、殺戮劇もそこまでだった。どこからともなく飛来した弾にその頭をつぶされ怪物は絶命する。味方を巻き込まず敵だけを撃ち抜く絶妙な狙撃だった。狙撃地点はそこから少し離れた小さなビルの中だ。
そこには二機のパワードスーツがいた。深緑色の一機は対物ライフルを構え、灰色のもう一機はその傍で観測手を努めていた。その左肩には第156A.M.A.T.A小隊と書かれた黒狼のエンブレム。深緑色の機体がトリス、灰色の機体が鷹野だ。
「第二防衛線も限界か……」
灰色の一機が分かりきっていたとでも言いたげに呟く。既に奴らの大群はこの部隊を大きく包囲し始めている。残るは最終防衛ラインだがそう長くは持たないだろう。そうではあるがここで引き下がればこの先の前哨基地まで道は一直線になってしまうため引き下がるわけにもいかない。
「鷹野、隊長達や他の増援はまだなのか?」
「もうそろそろの筈だ。トリス、さっきのやつから右に15mの位置にプラズマ発射型個体だ。」
トリスは巨大な対物ライフルから自分のスーツの後頭部に繋がっているケーブルを再確認すると再び狙いを定め始めた。
搭載されているAIから弾き出された結果を元に照準を調整し、トリスは引き金を引いた。銃弾が発射されると同時に轟音と衝撃が部屋の中に充満する。
「おう、一撃で沈めたぞ。こりゃ隊長が着く前に俺と鷹野は奴らの餌になっちまうな」
若干の皮肉を込めながら報告を鷹野に行う。鷹野はそれを頷きで返すとレーザーポインタで次の標的を指示する。指示を受けたトリスは標的をサイト内に収めながらAIが最適な弾道コースを割り出すのを待った。
その時、轟音とともに床が大きく捲れ上がる。しばらく間を置き一体のE.Lが穴から飛び出してきた。
「俺に任せろ!」
鷹野はそう言うと前に大きく跳び出し、スライディング。瞬間的に怪物の腹の下に潜り込む形になり、そのままショットガンを押し付ける。
「クソ食らえ、だ」
鷹野は引き金を引いた。

―――断末魔の悲鳴。

柔らかい腹を大きく抉られた怪物はそのまま力なくその場にへたり込む。
「ここもそろそろヤバいな、移動しねぇとな……」
ライフルを抱え傍に駆け寄ったトリスは鷹野に手を差し出す。鷹野は手をとり、立ち上がると死骸を思いっきり蹴飛ばした。
そのまま二人は急いでビルの階段を駆け下りると建物の入り口から出る。
「ふう、ようやく隊長のご到着か。待ちくたびれたぜ」
ジェットの轟音とともに地面に大きな黒い影が映り込む。空を仰ぐと輸送機からパワードスーツ3機と物資が次々と降ろされていくのが見えた。
ガルシア隊長や優、陽菜が到着したのだ。
「もうちょっと早くきてくれればな……」
トリスは呟きながら頭のライトを何回か点滅させると3機のパワードスーツはそれぞれの物資を掴みこちらに向きを変更し降りてくる。そして地面が近くなったところで姿勢を垂直に保ちバーニアに点火、速度を落とし着地。物資もパラシュートを展開し着地した。
「トリス、状況を教えてくれ。」
「一言で片付けるなら劣勢の極みです、サー」
軽く敬礼の形を作りながらガルシアの問いにトリスは応える。それを聞き、降りてきた三人は急いでそれぞれの武器を装備、点検を済ませた。
ガルシアは背中にミサイルポッドを掛け、ミニガンを手に持つと皆を集め指示を出す。
「まずは今出ている味方を最終防衛ラインまで撤退させるぞ、皆。第二防衛線はもう無理だ、他の部隊の増援もこっちに向かっているが間に合わないだろう。こうなったからには奴らを水際で食い止めて殲滅するしかない。」
それを聞いたトリスはバイザーの探索機能を作動させる。大量のE.Lが味方の陣地に群がっているのが反応から分かる。数はざっと二百ぐらいだろうか、しかし対する味方は50人程度、とても耐え切れるようには思えない。中にはパワードスーツも混じってはいるがそれでもこの状況ではその能力も活かしきれないだろう。
「しかし、隊長。あの数の中を掻き分けて孤立した味方を救出するのは中々難しいのでは?」
「優、それでも俺たちはやるんだ。意地でも道を作って味方の元へとたどり着くぞ」
「了解、できるだけの事はやってみます。」
それを聞いてぽんと陽菜は優の肩を叩いた。頑張って、もしくはファイトとでも言いたいのだろう。
「一気に敵の中を駆け抜けるぞ、遅れるなよ!!」
ガルシアは走り出した。ミニガンやミサイルポッドなどの重装備を行っているとはとても思えないスピードだ。
その後を陽菜、鷹野、優、トリスの順で続く。
「はあぁぁぁぁっ!!」
気合いとともに陽菜は群がるE.Lをその手に持った二つの剣で切り刻んでいった。陽菜の華麗な動きを優と鷹野がカバー。隙を突こうと群がってくる怪物をショットガンとアサルトライフルで撃ち倒す。
「ミサイルいくぞ、気をつけろよ!」
威勢のいい声とともにガルシアは背中に掛けていたミサイルポッドを肩に担ぎ照準をつけ発射。打ち出された弾体は煙の尾を引きながら敵に食らいつき爆散する。
孤立した味方のいる陣地まであと少し。
優は敵を撃ち倒している中でE.Lの大群の中に蒼い光を見た。
光を放っているのはサソリのような怪物の両手、プラズマ発射タイプの個体が陽菜を狙っているのだと気づく。両手の鋏のような箇所には蒼い光が渦巻き既にいつでも撃てる状態になっていた。
「陽菜!プラズマだ!」
「きゃっ!?」
陽菜は自分が狙われている事に気づいたが既に剣を大きく振ってしまい、直ぐには回避行動を取れない。
そしてプラズマ弾が発射される。
回避は間に合わないと判断した優は陽菜の前に飛び出しながら左腕につけていた携帯型の対プラズマ用シールドを展開。自分の上半身を守ることができる程度の大きさの特殊な板が広がる。そのまま撃ちだされたプラズマを防いだ。重い衝撃が体に伝わるがそれを堪える。強力なプラズマにスーツが悲鳴を上げ、バイザーにノイズが走る。
「ぐあっ……」
プラズマが消えると同時に優は後ろに倒れこんだ。
怪物は倒れこんだ優に狙いを定めていた。既に次のプラズマ弾を撃とうとしている。
「マズイぞ!」
トリスは急いでライフルを傍にあった壊れた車のボンネットに固定、AIの測定を待たずに手動で狙いをつけて撃った。弾は今まさに撃たんとするプラズマ発射型タイプの頭に命中、その衝撃でプラズマ弾はあらぬ方向に撃ちだされ周囲の敵を巻き込む。