アオイホノオ―終末戦争―
まず口を開いたのは優だった。既にパワードスーツ操縦用のスーツを着用していたガルシアが立ち上がる。
「司令部から連絡があった。そのまま基地には戻らずに熱海方面へと集結している味方の部隊と合流することになる。俺たちは敵侵攻部隊を気化爆弾投下地点へと誘導する作戦に参加する事になった。」
ということは濁流のように押し寄せる何十万ものE.Lを相手に戦う事になるのだ。作戦の内容はポイントへと誘導するだけだが、これから先の戦いは非常に厳しいものとなるのは予想できる。
ガルシアは更に続ける。
「俺たちの部隊は箱根の芦ノ湖付近に設定されたポイントへと誘導するチームに組み込まれる。今からそこに向かうぞ。」
輸送機の室内に張り詰めた空気が立ち込める。
しかし、その空気を揺さぶるかのように輸送機が大きく揺れた。
「何だ!?」
優は座っていた椅子から大きく投げ出され床に打ち付けられる。同じく投げ出されるものの先に立ち上がっていたトリスが優に手を貸して立ち上がらせた。鷹野やガルシア、陽菜は近くの壁や机などに掴まっていたようで何事もなかったようだ。
『E.Lの攻撃です!!大型がプラズマ弾を撃ってきやがった!!くそっ、コントロールがっ!?』
機内放送でパイロットの切羽詰った声が流れる。計器類から出ているらしいアラート音も声に混じって流れてくる。
更に衝撃が加わると機体が大きく傾いていくのが分かった。輸送機が落ち始めている。
『この機体は駄目だ。全員、格納室に向かえ!!スーツを着てればなんとか耐えられるかも知れない。』
パイロットの放送が再び入る。確かにスーツの耐久性ならばもしかしたら無事にこの状況を切り抜けられるかも知れない。
5人は急いで格納室に入り、スーツを装着した。
その最中、爆発音が響く。エンジンかどこかをやられたのだろう。機体の揺れが大きくなり、地上へと急激に落ちていっているのが分かる。
「全員、対ショック体勢!!」
五人はそれぞれの近くの物に掴まったりするなどして衝撃に備えた。
ボンッ!!
爆発音と共に後部ハッチが吹き飛ぶ。
「ハッチがっ!?」
「なっ!?」
優と鷹野はその衝撃によって機外へと放りだされる。近くにいたガルシアや陽菜が腕を伸ばすが二人を掴めない。
「優、駄目!!」
陽菜が叫んでいるのが遠くで聞こえた。黒煙と火を上げている輸送機がみるみる遠ざかっていくのが分かる。
―――そして、そのまま二人は夜の森へと吸い込まれていった。
作品名:アオイホノオ―終末戦争― 作家名:ますら・お