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　そしてその週の土曜日、私達はスコップを持参して地図に書かれている場所へ向かった。
「どこに行くか分かったの？」
「ん、ああ……　まずは宝の隠し場所、これは簡単だ。神社だよ」
　まぁ確かに神社のマークだけど……
「でも秀、神社なんてたくさんあるよ？」
　功治君が質問をすると十波君は暗号文を指差した。
「だからこのマークの色がポイントなんだ」
　つまり赤い神社って事？　私は想像するけど屋根から壁まで真っ赤な神社なんて聞いた事が無かった。
　まさか強盗が入って血まみれになったとか炎に包まれたとか？
「河合さん、昨日何か読んだ？」
「え、ああ……　ミステリー小説、今はまってて……」
「いや、そこまで物騒なものじゃないから、行けば分かる」
　私達が向かった先はこの前言った展望台の先にある柊神社と言う神社だった。
　一件どこにでもあるような普通の神社だった。
「本当にここで当ってるのか？」
「ああ、赤いのはこの鳥居だ」
　確かに目の前にある鳥居は赤以外の何色でもなかった。この島にいくつもあるけど赤い鳥居はここしかないと言う。
「シゲさん元気かなぁ？」
「シゲさん？」
「ああ、僕のお祖父ちゃんの幼馴染、よく仕事サボってパチンコ行ってるんだよ」
　十波君は苦笑しながら神社の敷地に入る。白い奇麗な石畳が並ぶ先には掃除が行き届いた立派な境内が見える。
　そして境内から少し離れた場所にはこの神社のシンボルである樹齢２００年を超えるリッパな御神木がそそり立っている。
「そう言えばここに来たのって正月以来だ」
「滅多に来ないもんね」
　龍太郎君と羽須美ちゃんが言ってるとその時だった。
「ん、秀坊じゃないか？」
　突然後ろの方から声が聞えてきた。するとそこには青い袴に白い着物のお爺さんが立っていた。
「あ、シゲさん」
　この人が？　髪の毛が乏しい五十代くらいのお爺さんだった。
「また相変わらず冒険ゴッコをしているのか？」
「シゲさんこそまたパチンコ？」
　その皺だらけの手には煙草やらクッキーの箱などが入った紙袋が持たれている。
「ああ、今日は馬鹿勝ちしてな……　あ、そうだ。これはみんなで分けるといい」
　そう言うとシゲさんはクッキーの箱を渡した。
「わーい！」
　功治君達はお菓子を貰って喜んだ。
「それで、今日はどんな冒険ゴッコをしてるんだ？」
「……冒険『ゴッコ』じゃなくて宝探しだよ」
　すると十波君は地図を見せた。するとシゲさんは顔が強張った。
「秀坊、お前これをどこでみつけた？」
「えっ、ウチの土蔵だけど？」
「そうか、あそこにあったのか……」
「これもしかしてシゲさんの？」
「ん、まぁな……」
「そう、じゃあこれ返すよ」
　十波君は地図を渡しましたがシゲさんは何を思ったのか微笑して片手を振って断りました。
「……いや、それは秀坊が持ってていい。お宝も見つけられたらくれてやろう」
「え、いいの？」
「ああ、もしみつけられたらな。まぁ、今なら大丈夫か……」
　それだけ言うとシゲさんは笑いながら境内の方へ向って行った。