冒険倶楽部活動ファイル
使った道具を片付けると次は私の部屋に向った。
本屋さんで買った型紙で箱を作り、ラッピング用の包装洋紙を鋏で切った。
「羽須美ちゃん上手ね」
「えへへ、こう言うのって得意だから……」
羽須美ちゃんは微笑した。
入れ物も完成してチョコレートを敷きつめて包装用紙を巻いてリボンを結んだ。
全てが終わって時計を見ると午後3時を回っていた。
私はお茶の準備をすると自室で待っている羽須美ちゃん達に持って行った。
「おまたせ」
実は趣味と言う訳では無いのだがお茶には少々うるさかった。
普段本ばかり読んでる私にとって紅茶は欠かせなかった。
書く側になってからもそれは同じで、私にとって紅茶はもう1つのペン(パソコンで書いてるけど)になっていた。
「たくさんできたね」
私は部屋の片隅に山積みにされているチョコレートを見た。
「これで男供は私達にメロメロよね」
「いや、メロメロは無いでしょ……」
「あはは〜」
舞加奈ちゃんは笑った。
「でも不公平だよね、男どもは私達にお返ししなくていいんだから」
「お返しが目的で作った訳じゃ無いでしょう?」
それに全員がお返しをくれないって訳じゃ無いし、
「いや、それもそうなんだけどさ…… ほら、私達来月卒業じゃ無い?」
「あっ……」
私はカレンダーを見る、
まだ2月だけど来月の3月10日、この日は星上小学校の卒業式だった。
「どう考えても14日は男供とはあえないよね…… ほのかちゃん?」
「えっ? あ、何でもないよ……」
私は首を横に振った。
すっかり忘れてた。
私達は小学校6年生、もうすぐ卒業だった。
それから時が流れて時間は5時を回った。
羽須美ちゃんと舞加奈ちゃんは帰る時間となった。
「じゃあね」
「ばいば〜い!」
後片付けの終わった台所を通って私の部屋へ向うと皆に渡すチョコレートを手に取った。
「みんな…… 離れ離れになっちゃうんだ。」
どんな気分なんだろう、
私は物心付いた時から転校の繰り返しだったからもう慣れっこだけど、秀君達は幼い頃からずっとこの島で暮らしてきた。
星上島には中学校もあるし、中には本土に行くって子もいるだろうけど、やっぱり寂しいって気持ちはあるのかな?
「考えてみれば…… ずっとお世話になりっぱなしだな」
私は机の上に置いてある書きかけの『冒険倶楽部活動ファイル』を手に取った。
今9月の星上大運動会に出た時の事を書いていた。
パイレーツ・ランド偏が終わってしばらく経った日の事、星上島では大人から子供まで参加自由の星上大運動会が行われた。
秀君、功治君、舞加奈ちゃんが赤組、私、龍太郎君、羽須美ちゃんの3人が白組に分かれる事になった。
運動会の種目に仮装リレーと言うのがあった。
これは参加者が引いたクジに書かれているコスプレをしてゴールをすると言う物だった。
しかし秀君がメイド服のクジを引いてしまうと言うアクシデントがあってしまった。
何でも秀君には年に一度猛烈についてない日があると言う、
とにかく引いてしまった以上は仕方ないので、秀君は最下位ながらもメイド服を着て(女の私が負けたと思うほど似合ってた)ゴールしたと言う話だった。
「本当にこれで良いのかな?」
私の心にこの言葉が過ぎった。
以前クリスマスでは風邪を引いた私の為に家まで来てくれた。
鯨那君までもが私の為にわざわざ寒空の下を重たい荷物を持って来てくれたって言うのに、私は羽須美ちゃんと舞加奈ちゃんとお金出し合ってインターネットで業務用のチョコを買って一緒にチョコを作っただけ……
シンプル・イズ・ベストと言ってもやっぱり何かした方が良い、そう思った私は台所にやって来た。
「まだ確か残ってたはず……」
やっぱり多めに買っておいて正解だった。
生クリームもシュガーもまだ残ってる、あとは足り無い物を買ってくるだけだった。
自室に戻って貯金箱を開ける、買い物をした時に残った小銭を貯めておいた物だから大した額は入ってない、でも充分だった。
薄暗くなって来た町の中を自転車を飛ばして走って行く、そしてコンビニにやってくると私は大急ぎでお菓子コーナーへやってきた。
「あった!」
私はそれを手に取るとレジに持って行った。
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki