冒険倶楽部活動ファイル
ファイル12 私の冒険
1ヶ月後の2月のある日だった。
暦の上ではもう春だと言うのに凄く寒い、地球温暖化なんて言葉なんて誰かが流した作り話だと思うくらいだった。
学校が終わった私達は帰り道に商店街を歩いていた。
「寒いね〜、早くこたつに入りたい〜」
「舞加奈ちゃん、猫じゃないんだから……」
とは言うけど私もそれは同意だった。
私もこう言った日は暖かい部屋でココアを飲みながら読書をしたかった。
今は書く側だけど……
「あっ」
コンビニの前を通ると1枚のポスターが貼られていた。
「もうすぐバレンタインデーだよね」
「そうね」
ポスターにはバレンタインデーの事が書かれていた。
『気になるあの子に贈り物、手作りチョコレート』
「チョコレートか……」
「あらあら〜?」
羽須美ちゃんは私の左腕に自分の右腕を絡ませながら言って来た。
「ふ〜ん、チョコレートあげるんだ」
「えっ? ……ああ、そうよね、クラスの子達にあげるのもいいかもね」
「本当にみんなに? 本命はいらないの?」
「ほ、本命って?」
「秀よ、ひ・で、」
羽須美ちゃんは耳元で囁いた。
よく漫画だとヒロインは赤面しながら髪の毛が爆発する物だけど、実際はそうは行かなかった。気持ちは分かるけど……
「ななな…… なっ?」
「う〜ん、でもまぁちょっと面白そうね、みんなで作る?」
「あ〜、私賛成〜」
こうして私達は女の子だけの冒険が始まった。
時は流れて週末の2月13日、私の家ではバレンタインデーのチョコレート作りが始まろうとしていた。
材料はあげる人間が多いからインターネットで取り寄せた業務用のチョコレート(何なら板チョコでもかまわない)、生クリーム、トッピング用シュガー(アーモンドやナッツでも可)、ゴムベラ、大きなボールと小さなボール、そしてお湯だった。
私と羽須美ちゃんと舞加奈ちゃんはエプロンと三角巾を着用すると早速取り掛かった。
まず基本的なチョコレートの溶かし方からだった。
細かく砕いて小さなボウルの中に入れる、別のボウルに熱湯を注ぎ込み、その上からチョコレートの入った方のボウルを乗せ湯煎にかけてゴムベラで優しくかき混ぜると固かったチョコレートがドロドロの滑らかになる。
「溶けた溶けた〜っ!」
「生クリームも出来たよ」
生クリームをコンロで中火で黄色くなるまで温めた(この時注意しなければならないのは沸騰させてはいけない事)私は2人の所に持って来た。
人数が多いのでクラスの男子は大量に作れるトリュフにする事にした。
トリュフの作り方は生クリームを湯煎で温め、チョコレートの入ったボウルに注ぎ込み泡立て器でチョコレートがドロドロになるまで混ぜ合わせる、
今度は冷水を用意、湯銭の時のように解けたチョコレートをゴムベラでかき混ぜてある程度固まるとスプーンですくってクッキングシートを敷いたまな板やトレイの上に乗せてサランラップに包んで丸める、
でもここで気を付けなければならないのは手が暖かいとチョコレートが固まらないから水などで体温を下げて置くと良い、
それを冷蔵庫に入れて固まらせ、後はココアパウダーをかけて出来上がりだった。
「わ〜い、できたできた〜」
喜ぶ舞加奈ちゃん、だけどまだ終わりじゃなかった。
それは私達が普段お世話になってる人達へのプレゼントだった。
溶かしたカップケーキなどに使うアルミホイルに注ぎ込んでシュガーをまぶして冷ますだけのオーソドックスなチョコレートを作るつもりだった。
「舞加奈ちゃんは誰に作るの?」
「えっと〜、まずお爺ちゃんと〜、お父さんと〜、近所の小父さん達〜」
「結構多いね」
「でも年配の人ばかりじゃ無い、ダメよ、もっと若い人を選ばなきゃ」
「そう言う羽須美ちゃんは誰にあげるの?」
つまらなさそうに言う羽須美ちゃんに私は訪ねた。
「もちろん若い人を選んでるわよ、鈴木さん家のお兄さんに、佐藤さん家のお兄さんに……」
羽須美ちゃんの言った人達は商店街のお店の中学生や高校生の人達だった。
よくお店を手伝ってるのを見かける、
「ほのかちゃんは…… あ、別に言わなくて良いから」
「なっ? 羽須美ちゃんっ!」
「どうせ秀達と鯨那君でしょ?」
「お、お父さんだっているもん……」
私は口を尖らせる、でも否定できないのも事実だった。
確かに私には親しい男の人はお父さんや秀君達くらいだった。
「でも〜、鯨那君の場合〜、義理でも喜ぶと思うよ〜」
「そうね、板チョコに『アイ・ラブ・ユー』って書いて置けば泣いて喜ぶんじゃない?」
「それは酷いよ」
用意した人数分のアルミホイルにチョコレートを注ぎ込み固まるのを待つ、ちなみにトリュフは固まったので入れ替える、
「結局秀のも同なじかぁ……」
「どうかしたの?」
「ほのかちゃん、特別な事でも用意してるのかと思ったからさ」
「シンプル・イズ・ベストって言うじゃない、普通が一番よ」
「そうかしらぁ〜?」
すると私の背後にほのかちゃんが密着して耳元で怪しくつぶやいてきた。
「何ならほのかちゃんが秀のチョコレートになれば? 溶かしたチョコをほのかちゃんに塗りたくってぇ……」
「なっ、何言ってんのよっ? 危ない発言しないでよっ!」
「大丈夫、あの鈍感王子だってそれなら簡単に堕ちるから、あ、ラッピングは気にしないで、私がちゃんとにしてあげるからぁ」
何だか最近羽須美ちゃんの思考が最近変な方に行ってる。
将来が心配になって来た。
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki