冒険倶楽部活動ファイル
その日の帰り道、私は羽須美ちゃんの家にやって来た。
「それじゃあ『秀とほのかちゃんのラブラブデート大作戦』の作戦会議を始めまーす。」
「わ〜っ!」
「勝手な作戦名をつけないで!」
聞いてるこっちが恥ずかしい、って言うか煽てる舞加奈ちゃんも分かってやってる?
「知ってるよ〜、小説作りでしょ〜?」
「分かってくれてるのね?」
「そんでもって〜、ほのかちゃんが悪のロボット帝国と戦うの〜っ!」
全然分かってなかった。今度そう言うの書いてあげようかな? もしくはサイト紹介して自分で書かせてみようかしら?
「まずはウィンドウショッピングで買い物をして、次に映画見てゲーセン行って……」
「ちょっ、ちょっと待ってよ! 私そんなにお金持ってないよ!」
私のお小遣いは月3000円、だからあっと言う間になくなっちゃうよ。
「それもそうね、じゃあ先にこれを決めよう!」
すると羽須美ちゃんは自分のクローゼットを開けた。
それから週末の土曜日、私は十波君が待っている商店街入り口へとやって来た。物陰から舞加奈ちゃんが私と羽須美ちゃんに向かって敬礼をした。
「ターゲットが来ました。隊長!」
「ごくろう、舞加奈二等兵。さぁ作戦開始よ。ほのか伍長」
「誰が伍長よ、って言うか本当に行くの?」
私は今の姿で出ていくのには抵抗があった。確かに羽須美ちゃんのコーディネイトは最高だけどそれを見せる相手が十波君だからなお更だった。
この前は夏祭りで私達3人は浴衣だったし、功治君や龍太郎君もいたからある程度大丈夫だったけど今回は2人きり……
「凄く恥ずかしいよぉ!」
「大丈夫よ、今のほのかちゃんを見てデートに誘わない男なんていないわよ!」
「そ、それはそれで困る……」
「いいからホラ! さっさと行くの!」
「きゃあ?」
羽須美ちゃんは私の背中を押し出した。そして私は十波君の前に出た。
「あっ……」
十波君と私は目が合った。そして十波君は私の姿を見て目を丸くした。
左右に少し結んだ髪、赤いチョーカーに青いブラウスの上から白いカーデガン、三つ折り靴下に白い靴、肩からピンクのポシェットをかけていた。
「えっ、あの…… 河合さん…… で良いんだよね?」
「あ…… は、はい!」
なぜか敬語になってしまう私、十波君も凄く動揺していた。
思わずこの場から逃げたかったけど動くことすら出来ない、これじゃ時間が経つだけでデート…… もとい、取材どころじゃない、
「ん?」
すると携帯に電話が掛かって来た。でもそれは私のじゃなくて十波君からだった。十波君は携帯を見る、どうやらメールだったらしい、
「……そう言う事か」
十波君は携帯を閉じると微笑しながら私に近づくと手を差し出した。
「行こうか、ほのか」
「……えっ?」
私は思わずキョンとなる、ほのか?
と思った時、私の携帯にメールが届いた。
「舞加奈ちゃん?」
メールを開く、でも差出人は羽須美ちゃんだった。
何故かと言うと携帯持ってるのは私と十波君と舞加奈ちゃんだけだからだ。
『さぁミッションスタートよ(>▽<)、
秀には今日一日ほのかちゃんを恋人として悪人の手から守るように言ってあるからね、
それとほのかちゃんの秀への呼び方は『秀君』だから頑張って(笑)』
私は笑えない(恥)、って言うか恋人って設定なの?
私は2人の方向を見ると携帯を持った羽須美ちゃんと舞加奈ちゃんが親指を立てていた。
(あ、あの2人ぃ〜〜、)
「どうした? 時間勿体無いし行こうよ。ほのか?」
「あ、うん…… その…… ひ、秀君」
私は恐る恐る手を伸ばすと十波君…… いや、秀君の手を握った。
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki