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冒険倶楽部活動ファイル

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 制限時間は10分、マツボックリが1つ5点、ドングリが1つ1点、点数が多い方人が勝ちだった。
「えっと……」
 私達は冒険ポーチの中からスーパーで売ってるビニール袋を取り出して広げると手当たり次第にドングリやマツボックリを入れていった。
「……クスクス」
「ん?」
 突然笑い声が耳に入り振り向くとそこには私達より背の低い、見た目でいえば小学校の低学年くらいだろう、
 雪の様に白い肌に黒いオカッパ頭、白い長袖のワンピースを着た女の子が立っていた。
「誰? 近所の子?」
 私が訪ねるとその子は私に背を向けて走り出した。
「あっ!」
 するとその子は転んでしまった。
「ちょっと、大丈夫?」
 私はその子を抱き起こした。
 見るとその子の右膝から血が出ていた。
「ああ〜 擦りむいちゃったね。」
 私は冒険ポーチからウェットテッシュとバンソウコウを取りだして女の子の膝に張ってあげた。
「ありがとう、お姉ちゃん。」
「うん、アナタも泣かなくて偉かったね、えっと……」
「つぼみ……」
「……つぼみちゃんね。私は河合ほのか。よろしくね」
「うん、お姉ちゃん」
 お姉ちゃんなんて言われるの初めてだから照れちゃうなぁ、一人っ子だし……
「あ、良かったら皆で遊ばない? 私友達と来たの」
「えっ、でも……」
「大丈夫、みんな言い人達だから」
 私は後を振り向いて十波君達を呼ぼうとする、
 だけどそこには十波君達の姿は無かった。
「あれ? みんなどこ?」
 この森はそんなに広くないし私を置いて代えるはずが無い、
 携帯を取り出して連絡しようとしたけど圏外になっていた。
「あれ、おかしいな……」
 民家が近くにあるから通話できるって言ったのに……
「お姉ちゃん、」
「何? つぼみちゃん?」
「こっちに来て」
「え、でも……」
 私は十波君達が気がかりだった。
 するとつぼみちゃんが私の手をつかむと走り出した。
「ちょ、ちょっと、つぼみちゃん!」
 連れて行かれたのは花壇だった。
 人の頭くらいある岩で覆った策の中で色んな花が植えられている。
「これ、つぼみちゃんが1人で?」
「うん」
「これって、コスモスでしょう?」
「うん」
 私はあんまり詳しくないけどそのくらいなら分かる、
 まだ小さいのにこれだけの花を育てられるなんて正直凄いと思う。
 つぼみちゃんが雑草を抜き取り始めると私もそれを手伝った。
「そう言えば、つぼみちゃんって近くに住んでるの? 一体何年生? 何組?」
 するとつぼみちゃんの手が止まり凄く悲しそうな表情になった。
「学校、行ってない……」
「えっ? ……あっ!」
 学校に行ってない?
 もしかして誰かに虐められて登校拒否とか何かの病気で登校できないとか?
 だとしたら悪い事聞いちゃったな……
「あ、そうだ。」
 私は冒険ポーチの中からウエハ―スチョコを取り出すとつぼみちゃんに渡した。
「食べていいよ。」
「えっ?」
 つぼみちゃんは袋の開け方が分からないのか戸惑っていた。
 私は袋を開けてあげるとつぼみちゃんはチョコレートにかぶりついた。
「……美味しい。」
「そう? 良かった。」
 私が作ったんじゃないけどね、
「……でも弱ったなぁ、十波君達どこに行ったんだろ。」
 私がため息を零す、するとつぼみちゃんは言って来た。
「お姉ちゃん、遊んでくれないの?」
「えっ? そんな事ないけど……」
 つぼみちゃんが泣きそうになった。
「……私、また1人になっちゃう」
「えっ? 1人?」
 つぼみちゃんは頷いた。
「私、お父さんもお母さんもいない、友達もいなくなっちゃった。ずっとここで待ってるのに……」
 つぼみちゃんを見てると昔の私を思い出した。私も昔は1人だった。
 十波君達と知り合わなければ今でもつぼみちゃんみたいな事になってたと思う。
「つぼみちゃん!」
 私はつぼみちゃんの手をつかんだ。
「つぼみちゃん、一緒に行こう」
「どこに?」
「私のお友達の所、紹介してあげるよ」
「で、でも……」
「良いのよ、私も気持ちは分かるから」
 私は自分の事を話した。
 私もこの島に来るまで1人だったって事を、お母さんはいないけどお父さんは朝早くから夜遅くまで仕事して来るからほとんど顔を会わせる事が無いって事を……
「寂しく無いの?」
 つぼみちゃんが尋ねてくると私は微笑する。
「そりゃ私もね、だけど今は違う。冒険倶楽部のみんなにクラスのみんな、そしてこの前は鯨那君って子と知り合ったの、みんな良い人達よ、だから……」
「無理だよ、みんな私を忘れちゃう」 
 以外と頑固だなぁ、
「そんな事ないよ、つぼみちゃんのお友達はきっと来れない訳があるのよ、百歩譲ってその子がつぼみちゃんを忘れてても、自分が覚えてればいつかは形になって現れるのよ」
「私が、覚えてれば?」
「……私の言葉じゃなくて本の受けよりなんだけどね、つぼみちゃんはその子の事が好きなんでしょう?」
「うん」
「だったらそれでいいじゃない、自分がその子の事をどれだけ大切に思えるか、それが一番重要なんじゃないかな?」
「………」
 するとつぼみちゃんは何も言わなくなった。もう大丈夫かな?
「じゃあ行こうつぼみちゃん。みんな待って……」
 私がつぼみちゃんの手を取ろうとするとつぼみちゃんは私の手を振り払った。
「つぼみちゃん……」
 やっぱ駄目だったのかなぁ……
「ありがとうお姉ちゃん、私、本当はもう行かないといけないの、」
「えっ?」
「最後にお姉ちゃんと会えて嬉しかった。私の事は心配しないで…… また会えるから。」
「最後って、どう言う事? ねぇ!」
 つぼみちゃんはニッコリ笑う、
「つぼみちゃんっ! ……あれ?」
 すると不思議な事につぼみちゃんが煙のようにいなくなっていた。
 どこに行っちゃったんだろ?
「河合さん!」
 後を見ると十波君がやって来た。
「良かった、ここにいたんだ」
「ここって、十波君こそどこにいたの?」
「はぁ? だって河合さんが突然居なくなったから……」
「えっ?」
 話がかみ合わない、すると十波君が私の後を指差した。
「それ何?」
「えっ? あれっ?」
 私は目を疑った。さっきまで咲いていた花壇の花が枯れていた。
「そんな、どうして…… あっ?」
 私はその花壇で一本だけ枯れそうになっているコスモスを発見、でもその茎を見るとバンソウコウが張られていた。
 これは私がつぼみちゃんの膝に張った奴と同じ奴だった。
「まさか、つぼみちゃんって……」
「あら、秀君?」
 するとその時、私達の後ろに大学生くらいのお姉さんが立っていた。
 腰まである茶色のストレートヘアに赤い淵のメガネ、緑のワンピースの上から黒いカーディガンを羽織った茶色いブーツを履いた人だった。
「えっ? 美佳姉ちゃん?」
「知り合いなの?」
「ああ、シゲさんのお孫さんなんだ」
「シゲさんって、あの神社の?」
 彼女の名前は柊美佳さん、本土にある薬品会社に努めていたんだけれどもまとまった休みをもらって里帰りしに来たと言う、
「ああ…… やっぱりこうなってたかぁ……」
 すると美佳さんは花壇の方に近寄る。
「このコスモスもあと数時間で枯れちゃうわね……」
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki