冒険倶楽部活動ファイル
イベントが終わると午後三時を回っていた。
対戦相手は帰りの電車があるので帰ってしまったが泊まりがけで来た私達はキング・ポセイドンの中にあるレストランでバイキング料理を食べていた。
「おいしーね」
「うん」
私達はとても満足だった。
「それにしても……」
私はテラスの方を見る、そこには真っ白に燃え尽きた十波君と鯨那君が椅子に座ってうなだれていた。
「「はぁ……」」
2人の落ち込みようは半端じゃなかった。「負けたのは仕方ないのに……」
スローモーションの判定の結果、僅か無さで相手チームの勝ちとなった。
勝者のトロフィーは相手チームの物となり、私達には記念のメダルが与えられた。
「あいつら本当に仕方ないよねぇ」
「ゴハン食べればいいのに〜……」
「やっぱ河合さんの言葉が堪えたんじゃないか?」
「えっ?」
私は試合の事を思い出した。
後になって考えると私自身も凄く恥ずかしい、
まるで私の方が悪役だった。
私は食べていたお皿をテーブルに置くと2人の側へ向かった。
「十波君、鯨那君」
2人は私の顔を見ると目を反らした。
私も顔を合わせられる状況じゃなかった。やっぱり気まずいなぁ……
「ゴメン、河合さん」
先に口を開いたのは十波君だった。
すると鯨那君も後に続く。
「オレ達、負けた……」
2人は2人なりに反省してるみたいだった。
私も少し言い過ぎと謝る事にした。
「あの、私こそごめんなさい…… 言い過ぎた」
「いや、負けたのはオレ達がケンカしてたからだよ。ほのかちゃんは悪くないよ」
「ああ、余計な意地張ったせいでこうなった。それは事実だ」
会話が途切れた。
「でもカッコよかったよ」
「えっ?」
2人は振り向く、すると後ろから皆もやってきた。
「そ〜そ〜、漫画みたいで凄かったよ〜」
「まぁ、オレは楽しかったけど」
「僕も負けちゃったし」
「まぁ、おあいこでしょ?」
皆も気にしてなかった。
「あのさ2人供、また一緒に出ようよ。私ハガキ送るから」
「あ、僕もやる」
「オレもオレも」
正直懸賞に当るかどうかは分からない、でも私達にはこれしか言えなかった。
すると鯨那君は笑いながら立ち上がった。
「あ〜〜っはっはっはっ! 安心してくれ皆、この海原鯨那、二度の敗北など無いっ!」
「ったく、よく言うよ」
「何ぃっ? 言いたい事があるならはっきり言いやがれ!」
「ちょっと十波君っ!」
すると十波君はため息を零して呼吸を整えると膝に力を入れて立ち上がる。
「僕もハガキを送る、また参加できるかどうかは分からないけど、このメンバーで出て今度は必ず勝つ!」
十波君は大真面目だった。もうこうなると安全だった。
「鯨那、今度は足引っ張るなよ」
「お前もな、秀!」
2人はお互いの右手を叩き合った。
この瞬間2人が繋がった気がして私達は嬉しかった。
「それはそうと…… ほのかちゃん!」
すると鯨那君が両手で私の右手を握ると真剣な眼差しで見つめてきた。
「今までオレには怒ってまで何とかしようって人はいなかった。父さんや母さんを除けば君が始めてだ!」
「そ、そうなの?」
「この海原鯨那、君に惚れました。オレと付き合ってください!」
「「「「ええええっ?」」」」」
私も周りも驚いた。
「ちょ、ちょっと待って、私は……」
「おい、鯨那……」
すると十波君が後ろから鯨那君の肩を?んだ。
「あん?」
鯨那君は後を振り向く、
何と十波君は今まで見せた事の無い、物語の主人公がしてはいけない顔になっていた。
思わず私も背筋に悪寒が走った。
「河合さんから離れろ、馴れ馴れしい」
「はぁ? お前には関係ないだろ」
「河合さんは明らかに怯えてる。しつこい男は嫌われるって事が分からないのか?」
「はぁ? 誰がしつこいだ! このムッツリスケベ!」
「なっ、お前言うに事かいて……」
十波君の怒りのボルテージが上がって行くと2人はまた喧嘩を始めてしまった。
「はぁ…… 駄目だこりゃ」
みんなは手を上げる。すると羽須美ちゃんは目を輝かせながら私に言い寄ってきた。
「ねぇねぇ、ほのかちゃんはどっちを選ぶの?」
「な、何言ってんのよ? 私まだそんなんじゃ……」
羽須美ちゃんも変なスイッチが入っちゃった。
クルクル回転すると左手を胸に、右手を空高く上げて勝手に喋り始めた。一体どこの詩人よ?
「ああっ! 2人の男が1人の女の子を取り合う…… これぞ王道ラブロマンスっ!」
「人の話を聞けぇ―――っ!」
私の声は一番星が輝き始めて空に木霊した。
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki