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冒険倶楽部活動ファイル

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 私は十波君と供に商店街を抜けて十波君の家の近くの雑木林までやって来た。
 ここも十波君の家の敷地らしい。
「こっちだよ」
 道らしい道なんて無い林の中を十波君のエスコートで進んで行く、民家が近いから携帯は通じるけど結構広いらしいので迷わないように手を繋いでくれた。
「この季節はやぶ蚊も多いんだ。虫除けスプレーしておいて正解だったね」
「う、うん……」
 でも私にとってはそれど頃じゃなかった。
 十波君の手の温もりが伝わってくる。
 日の光が差さない為にわりと涼しいが私の顔は熱かった。
 少し歩いて雑木林を抜けると視界に広がったのは水平線だった。
「ここって……」
 私は辺りを見回すとそこは崖だった。
 落ちないように恐る恐る下を覗いて見ると目もくらむほどの高さだった。
「ここね、僕が始めて冒険に出た場所なんだ」
 お祖父さんからご先祖様の日記を貰ってそれを読んだ十波君はリュックサックを背負ってこの雑木林の中を冒険し、たどり着いたのがここだったらしい。
「それ以来何かあったらここに来るようにしてるんだよ。この景色見てると悩んでた事なんか大抵吹き飛んじゃうんだ」
 十波君が微笑すると私は大きく広がる海を見る、視界いっぱいに広がる水平線はやや丸みを帯びていて地球が丸いと言う事が分かる、さらに青い海水が太陽光に照らされてキラキラと輝いて、静かでひんやりとした潮風に私の髪が靡いた。
「奇麗……」
 私は正直感動した。
 学校の窓からも海が見えるし、正直海が近くにある町に行った事もあったし、この島に来る前にフェリーにも乗った。
 私にとってあんまり珍しくないのに今この瞬間は心から思った。こうしてゆっくり見たからかもしれない……
「ここ、実は功治達も知らないんだ」
「えっ?」
 って言う事は知ってるのは私だけ? 
 十波君はその場に腰を下ろした。
 私は座りながらがら尋ねてみる。
「どうして?」
「ん、何でかな? 何だか河合さん昔の僕に似てるからかな?」
 そう言えば十波君も昔は夢が無くて悩んだ事があったんだっけ、
「河合さん、夢って好きな事から生まれるんじゃないかな?」
「好きな事から?」
「羽須美は家が服屋さんだから小さなころから裁縫とかミシンの使い方も教わってて服や刺繍をするのが好きになった訳だし、舞加奈がロボットが好きになったのはお爺さんが発明好きだって聞いたし、龍太郎は道場の跡取りだってのは親が決めたみたいだけど本人は剣道が好きだから苦しくないって言うし…… まぁ、浩二はいつの間にか星が好きになってたなぁ……」
 そう言えばみんな好きだからやってるんだよね、
 家庭科の授業中は羽須美ちゃんはとても幸せそうだし、
 功治君は図書室で宇宙関係の本を見て目を輝かせてたし、
 龍太郎君は気がつけば素振りばかりしてるし、
 舞加奈ちゃんはこの前自分が作りたいと言っていたロボットの絵を見せてくれた。
 十波君は冒険する時の顔はとても活き活きしていた。
「上手く言えないけど、夢って楽しくあるべきなんじゃないかな? そりゃうまくいかなかったり失敗する事もあるけど、やって楽しくないなんて辛いだけだし……」
 夢は真剣に取り組める事、失敗する事もあれば成功した時の喜びはとても嬉しく温かい。私の好きな事と言えばやっぱり……
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki