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朧木君の非日常生活(8)

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着々と時間が過ぎていっても中々蜻蛉さんは口を開こうとはしない。
ずっとある一点を見つめていた。
その一点には一人の人物。
そう、蜘戒さんだ。
俺は、顔を動かさず瞳だけを動かして蜘戒さんを見た。
その蜘戒さんと言えば、いつものように、前髪で表情を覆い隠していた(会うのは今日で二回目だけど基本的に俯いている)。
けど、分かる。
手に取るように、見えていないものが自然と浮かんでくるように分かる。
確実に、冷や汗をかいている。
蜻蛉さんのプレッシャーに負けそうになっている。
そう━━何かを隠している。
それを蜻蛉さんは見抜いているのだ。
この空気を作り出しているのは蜻蛉さんなのだから。
この空気の中心にいるのは蜻蛉さんなのだから。
あの鬼火ちゃんですらも、俯いてしまうくらいの重圧を放っているのだから。
全てを把握し、掌握しているんだ。
やっぱり侮れないよ、蜻蛉さん。
いや、侮ってはいけないな、この人は。
作品名:朧木君の非日常生活(8) 作家名:たし