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朧木君の非日常生活(7)

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 「だからね、朧木くん。これは結局は民間伝承さ。まぁ、いかに正確な伝承だろうと僕たちにとっては、とても曖昧なことなんだ。だって、目の前で起きた事ではないからね。文章の中での存在だよ」
 確かに、蜻蛉さんの言う通りだ。
 結局は伝えられたこと。
 確証も何にもない。
 実に、曖昧なことだ。
 「次に、医学的な見解を話そう。『自己幻影視(AUtoscopy)』、ドッペルゲンガーはそう呼ばれている。脳の側頭葉と頭頂葉の境界領域(側頭頭頂接合部)に脳腫瘍ができた患者が自己像幻視を見るケースが多いらしい。この脳の領域は、ボディーイメージを司ると考えられていて、機能が損なわれると、自己の肉体の認識上の感覚を失い、あたかも肉体とは別の『もう一人の自分』が存在するかのように錯覚することがあると言われているんだ。江戸時代では離魂病と名付けられていたらしいね」
 もはや訳が分からない。
 医学的な解釈が来るとここまで難しくなるのか。
 なんで人間はこう・・・・・・難しく解明しようとするんだろう。
 「でも、蜘戒さんの場合この医学的な根拠で説明できない部分がある」
 「・・・・・・脳腫瘍」
 「そう、その通りさ、朧木くん。脳腫瘍が進んでいる時点で蜘戒さんはこの場にはいない。いることができない」
 「それじゃ・・・・・・私は・・・・・・・・・・・・やっぱり・・・・・・」
 オカルト的な考えしかできない。
 俺にだってもうその選択肢しか残されていない。
 そうなると、蜘戒さんの死期が近いということになる。
 蜻蛉さんは、ある一種の意味での死の宣告をしたのだ。
 蜻蛉さんは・・・・・・死神だ。
 死を司る神だ。
 けど俺には解決策なんて見つからないんだから、口の出しようがない。
 何も言えない。
 聞くことしか出来ない。
作品名:朧木君の非日常生活(7) 作家名:たし