朧木君の非日常生活(7)
「はい・・・・・・間違いありません。その時のことは、よく覚えていますから・・・・・・今、私が経っている所にもう一人の私がいました。でも、どっちが本物の私なんでしょうかね・・・・・・今の私が偽の私かもしれないし・・・・・・本当にあの私がドッペルゲンガーなのかもしれませんし・・・・・・」
蜘戒さんが、言わんとしていることは分かる気がする。
でも俺だったら、もっと慌てているだろう。
慌ててる、という表現は間違っているかな?
要するに、恐怖だ。
だから、いかに闇属性だろうと蜘戒さんの落ち着きは凄いと思う。
実に感嘆だ。
「ここからは長くなるから、よく聞いてもらいたい」
蜻蛉さんはそう言い続けた。
「この前、ドッペルゲンガーは様々な解釈があると言ったよね? まぁ、有名な解釈で言うと、死期が近い人間がみる。もしくは、ドッペルゲンガーを見ると・・・・・・死ぬ」
『死』、簡単に蜻蛉さんは言っているけどその言葉は・・・・・・重い。
人間は、『死』というものを簡単に受け入れることはできない。
それほどまでに・・・・・・怖い、恐い。
「と、言っても結局それは所詮民間伝承に過ぎないから確証なんてない。実に曖昧な解釈だよ。人間が面白おかしく伝えたと言っても過言ではないね。そして、このオカルト的な意味を持つドッペルゲンガーには一つの解決策がある」
「解決策って?」
そんな民間伝承に解決策なんてあるのか。
「簡単だよ。そのドッペルゲンガーをどんな言葉でもいいから罵倒すればいいんだ」
「罵倒・・・・・・?」
そんな、そんな簡単なことでいいのか?
作品名:朧木君の非日常生活(7) 作家名:たし