朧木君の非日常生活(7)
「それはそうと朧木くん。もうそろそろ待ち合わせ場所兼現場だよ」
そう蜻蛉さんに言われて、ふと意識して目の前を見ると周りは相変わらずの田んぼ。
畦道はいつの間にか少し舗装された十字路になっていた。
そして、廃れた外灯が薄暗く照らしているのは勿論、蜘戒さんだ。
「蜻蛉さん、朧木さん、鬼火ちゃん。お久しぶりです。こんな私の為に夜分遅く申し訳ありません。あっ・・・・・・私の為なんかじゃないですよね。すみません、出過ぎたことを言いましたね。単なる暇潰しですよね? 暇潰し程度になってくれたら幸いです」
相変わらず面倒くさいな、蜘戒さんは。
でめ、蜘戒さんみたいな人初めてだから面白いからいいけどね。
「お久しぶり。さて朧木くん、早速だけど例のあれをお願いするよ」
「例のあれって?」
「僕に聞かないでくれよ」
「んじゃ、誰に聞けばいいんだよ」
「自分自身に聞けば自ずと分かるはずさ」
「知らねぇよ!!」
いらない振りはよしてくれよ。
でも、こういうやりとりがないと物足りないから別にいけどね。
「それじゃ、時間も勿体ないから本題に入らせてもらうよ。僕の場合は本題しかないからややこしいけどね」
「いいから話せよ!」
「朧木くんは冷たいね。ま、いいか。本当にここからは大真面目な話だ。散々バカ話はしたし、満足したからね。それじゃ、蜘戒さん。ドッペルゲンガーはここで目撃したということで偽りはないね?」
この声のトーンは、蜻蛉さんが本気モードに入った証拠だ。
俺は、とりあえず黙って聞いていよう。
作品名:朧木君の非日常生活(7) 作家名:たし