妄想
Scene4
「ねえ、まだ起きてる?」
隣の布団に寝ている彼女に声を掛けてみるも、返事は無い。
もう寝たのだろうか。
彼女のいる方へ寝返りを打つと、彼女もこちらを向いて寝ていて、予想以上に顔が近い。
静かに寝息を立てている彼女をそのまま見つめる。
いつ見ても長い睫毛、白くて柔らかそうな肌。
触れたくても触れられなかったそれらが今、目の前にある。
そして、その持ち主は夢の中。
ゴクリとつばを飲み、もう一度声を掛ける。
今度はさっきよりも小さく、声になっているのかすら定かではない。
「ねえ、寝ちゃったの?」
彼女は全く反応を示さない。
そっと、指でその柔らかな頬に触れてみても一瞬煩わしそうにしただけで、また気持ち良さそうに眠っている。
今なら、今なら誰にもばれずに私の密かな欲望を満たすことができる。
そのことに気付いた時、己の衝動を抑えることはできなくなっていた。
夢にまで見たその行為。
そう、これは夢だ。
彼女も私も夢の中にいるのだ。
高鳴る鼓動を抑えつつ、私は自分と彼女の唇を重ね合わせた。