妄想
Scene3
「私、餃子って手作りした事ないんだよね」
そう彼女が言うから、私の家で2人で餃子を作ることになった。
野菜を微塵切りにし、タネをこね、最も手間のかかる包む作業に。
さすがに私も皮までは作ったことが無かったから、市販のもので済ませる。
彼女の隣に腰掛け、包み方を教える。
一通りの手順を教えたにもかかわらず、いまいち要領を得ない彼女の手先を見ていると、横から口を出さずにはいられない。
「ほら、ちゃんと濡らしてからじゃないと……」
「ひだのところしっかり押さえて……」
すると、彼女が急にニヤニヤと口元をゆがめ始めた。
こっちが教えてあげているのに何事かと文句を言う。
「何ニヤニヤしてんのさ」
「いや、ね。なんか卑猥な台詞だなぁと思って」
そう言われてから自分が言った言葉を思い返し、その意味を飲み込む。
「ば、バカじゃないの! 何考えてんのよ!?」
「え? ナニも考えてないよ?」
それからはニヤニヤする彼女の顔も見ず、ひたすら包む作業に集中した。
結局、私が1人でほとんど包んでしまっていたのは言うまでも無い。