妄想
Scene18
朝、目覚めると隣で彼女が頭上の窓に掛かるカーテンに手を伸ばしていた。
どうやら窓の外の様子を窺っているようだ。
はっきりしない頭でむき出しになった滑らかな肩を眺めながら、こちら側の手を伸ばしていてくれてたら、さぞ絶景だったろうなと考えていた。
「あ、起きた?」
「うん。おはよう」
私の目が開いていることに気付いた彼女は伸ばしていた手を戻し、布団に潜り込んだ。
徐々に頭が冴えてくると同時に聞こえてくる水音。
「雨?」
「そう、雨」
本当は買い物にでも出掛けようかと思っていたけれど、雨天と聞いて一気に面倒になってしまった。
それに、少し肌寒い。
彼女の背中に腕を伸ばし、彼女の体温で暖を取ろうとした。
けれど、一度外気に触れた彼女の肌は布団に包まったままだった私のそれよりも温度が低かったらしく、一瞬ひやりとした。
「何?」
徐々に溶け合う体温の心地良さを噛み締めていると耳元で問われた。
構わず彼女の首筋に顔をうずめる。
「んー? 起きるの面倒になった」
私の言葉に彼女が鼻で笑う。
「だからってなんで人を抱き枕にしてるの?」
「ちょっと寒かったからさあ。嫌ですか?」
「別に嫌ってことはないけども」
顔を覗き込むまでも無く、彼女が苦笑しているのが目に浮かぶ。
「じゃあ、いいでしょ」
それでも無事に承諾を得たのをいいことに、更に体を寄せる。
擦れ合う肌の感触を味わう。
彼女の指が私の髪を梳く。
「今日、買い物どうするの?」
その声に耳元をくすぐられながら背中に回した手で肩甲骨の形を辿り、唇で鎖骨をなぞる。
「もうちょっとしたら考える」
背中から腰に手を滑らせると彼女が震えるのを感じた。
そのまま尻と太腿の柔らかさを味わう。
「もうちょっとってどのくらいさ」
「起きる気になるまで」
調子に乗って内腿に手を伸ばすとそうはさせじと彼女に腕をつかまれた。
「行く気ないでしょ」
「そんなこと……あるね」
私が笑うと、指でわき腹をつつかれた。
声にならない声が漏れ、思わず体をよじらせてしまう。
「今日くらいしか買い物に行けないんだから、早く行こうよ」
彼女の抗議にはいはいと空返事をしながら、またしても腿の柔らかさを味わう。
「ねえ、今日、湿度高くて髪ぼさぼさになりそうだからきっちりブローしたいんだけど」
更なる抗議も聞き流し、足を彼女の腿の間に割り込ませる。
ニヤリと口元が緩んだ。
「こちらも湿度高めですか?」
途端にバチンと背中を叩かれた。
「最っ低!」
言葉とは裏腹にくっくという彼女の笑い声を聞く。
最低で最高の休日の朝。