妄想
Scene17
「あなたのそういうところ好きだわ」
「そりゃどうも」
笑う彼女の言葉にこちらも笑って礼を言う。
何度目かもわからないそのやり取りに、私はもう舞い上がることすらなくなってしまった。
ただそこにあるのは、疲弊と諦観と自虐だけ。
彼女にはわからないだろう。
私がその言葉をどう思っているのかは。
毒にも似た彼女の声は私をじわりじわりと殺していく。
何度も何度も繰り返し、殺していく。
私が死んでいくことにすら彼女は気付かないで、何度も毒を投げかけるのだ。
笑って毒を投げつけるのだ。
それを受け続けるのにも、もう疲れた。
さよなら、さようなら。
もう金輪際会うことはないだろう。
そう思いながら、私はまた彼女に毒を盛られに駆けつけるのだ。