男女四人、ツイッター物語(笑)
そのせいなのか、彼の呟きは他の人よりもよく練られていて、ウィットにとんでいてとても面白い。亜樹美がいつもなんとなく見ているテレビ番組や映画なども深く考察するし、兄と同じ年だというのに色々なことをよく知っている。
しかも、ただ日常のことを話すだけの些細な内容のポストも、思わず笑ってしまうくらいに面白いのだ。
さらに、顔写真だと公言しているアイコンも、学校に行ってた頃に周囲に居た男子や兄、その友達よりも、ずっと格好いいのだ。
自分と同じ物を見て、自分以上に頭が良くて、おまけに面白くて格好いい。冬彦さんは亜樹美くらいの女の子が夢中になる要素をすべて兼ね備えていた。
だけど未だに引っ込み思案の亜樹美は、その考察に賞賛の@を飛ばしたり、おはようおやすみをポストするどころか、フォローすることさえままならない。
毎日冬彦さんのページに行ってその日のポストを読み返し、「フォローする」のボタンにカーソルを当てるまでは出来るものの……そこからは指が震えてどうしても何も出来ない。
有名人や漫画家なども、フォローすることが出来たのに、どうして冬彦さんのページだけ、自分はこうなってしまうのだろうか。
そう何度となく自分に問いかけても答えは出ず、まだ幼さの残る少女に出来ることといったら、冬彦さんをそっと非公式リストに入れ、その発言を、軒並みふぁぼる、つまりお気に入りに登録すること。
そして、彼が、所属する劇団の公演の告知をポストしたら、そっと公式RTに乗せて、TLに放つことだけだった。
他の人が彼にどんな@を送っているのか気にならないではなかったが、それは誰かのお手紙をのぞき見するようなものの気がして、どうしても出来なかった。
だけど、自分が寝る時間に冬彦さんがどんなことを呟いているのか、兄はインターネットと現実は違うというけれど、本当の冬彦さんは一体どんな人なのか。
そんなことを考えて、毎日眠れない日が続いた。
兄はそんな亜樹美の様子に気づいていたのか、ある日の晩ご飯の後、部屋に戻ろうとする亜樹美にこんな事を言って来た。
「今度冬彦とサシオフすることになったんだけどさ、亜樹美も来る?」
最初は断ろうと口を開いた亜樹美だが、自分と違って社交的な兄が、わざわざこんな事を言ってくれた理由にすぐに思い当たった。
作品名:男女四人、ツイッター物語(笑) 作家名:刻兎 烏