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おやまのポンポコリン
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novelistID. 129
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黄泉の国より帰りし子

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   死体に近づいて、しっかり抱き寄せる美也子。
美也子「幸太、目を開けておくれ」
   死体をゆさぶる美也子。だが死体に反応はない。
   死体をドサリと落とす美也子。
美也子「おお、おお……」
   後ずさりする美也子。
   その時、突然美也子の足元が崩れる。
   漆黒の闇の中をどこまでも落ちて行く美也子。

○ 黄泉の国
   どんよりとした夕焼け空が一面をおおっている。
   まわりは明治時代の農村を思わせる。
   杏の樹の下に倒れている美也子。
   木の枝からポタリと水滴が落ちる。
   その水滴で目を覚ます美也子。
   美也子、驚いて辺りを見回す。
美也子「ここは……黄泉の国?」
   どことなく寂しい感じの黄泉の国。
   しかし、よく見ると子供があちこちにいる。
   どの子も古い着物を着て、動きはスローモーション。
   歌いながら歩いている兄弟らしき二人。
   時折、重なり合って一人に見えたりする。
子供A「箱根の山は天下のけ〜ん」
   その子らを見ていた美也子、袖を引かれる。
子供B「お母さん……」
   幸太ではない、小さな女の子。
   やさしく頭をなでて首を振る。
   消える女の子。
   美也子、決意の表情になる。
   幸太の名を呼びながら探し回る美也子。
   あたりには異様な風景が広がっている。
   木の幹から頭を出して泣いている子。
   岩と殆ど同化している子。
   中空に浮かんで眠っている子もいる。
   そんな中、幸太を探し回る美也子。
   ついに、泉のほとりで幸太を発見する。
美也子「幸太!」
幸太「〈振り返り〉おかあさん……」
   喜んで抱き合う美也子と幸太。
美也子「お母さんと帰ろ!」
   うなづく幸太。
   美也子、幸太を抱きあげる。
   だが、幸太は首を振る。
幸太「だめだよ……お母さん、知らないの?」
美也子「えっ、何を?」
幸太「黄泉の国を出るときには顔を見ちゃいけないんだよ」
美也子「そう、じゃあ、おぶっていこうね」
   美也子におぶさる幸太。
   幸せそうな表情の美也子。
   幸太を背負って歩き出す。
幸太「お母さん、僕すごく喉が渇くんだけど」
美也子「大丈夫、母さん水筒持って来とるから」
   水筒を渡す美也子。
   幸太がおいしそうに飲んでいる。