黄泉の国より帰りし子
岩山の一本道を幸太を背負って歩く美也子。
今度は美也子が水筒を受け取り、喉をうるおす。
岩山を昇りつめると、霧の中……。
中空に浮かぶように洞窟が見えている。
迷わず、その中に入る美也子。
○ 照永洞内
洞窟の中、幸太をおぶって歩く美也子。
うす暗く幸太の姿はよく見えない。
幸太「〈少し太い声で〉お母さん、喉が渇いた」
美也子「はい、はい」
水筒を与える美也子。
また洞窟内を歩く。
しばらくすると……。
幸太「(さらに太い声で)お母さん、喉が渇いた……」
美也子、怪訝そうな表情になるが水筒を渡す。
また洞窟を行く美也子。
幸太「〈今度は明らかに野太い声で〉お母さん、喉が……」
ギョっとなる美也子。
思わず、後ろを振り向いてしまう。
スローモーションで振り向く美也子の顔。
その顔が激しい驚愕に変る。
美也子「ギャー!」
美也子の悲鳴が洞窟内に響き渡る。
グルグルと開店する画面。
○ 美也子の部屋。
明るい感じの和室。
暖かそうな日差しが差し込んでいる。
笑顔で幸太と遊ぶ美也子。
幸太は積木を楽しんでいる。
眠くなったのか美也子の膝に乗る幸太。
美也子、幸太を抱き寄せ……。
美也子「ねんねこさっしゃりま〜せ」
子守唄を歌ってやる美也子。
美也子「寝た〜子〜の可愛さ〜」
幸太、すやすや眠る。
幸せそうな美也子の表情。
○ 座敷牢前
山内、里子の他、延岡や駐在が深刻な表情でいる。
山内「この間、ここを抜け出しよりまして……」
里子「ああやって子供を連れ帰ってきましての……」
山内「それからは、どうしても離さんのです」
全員が心配そうに覗き込む。
○ 座敷牢の中
なかば腐敗した子供の死体を抱く美也子。
髪はバサバサで鬼気迫る笑顔。
美也子「起きて泣〜く子〜のねんころりん……」
幸太の死体を抱きながら幸せそうに笑う美也子。
――――― 了 ――――
作品名:黄泉の国より帰りし子 作家名:おやまのポンポコリン