被虐的サディスティック
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――ねぇ、あなたはどうしてこんなことを望むの?
私は答えようにも、右手で腹部を押さえながら咳き込むことしか出来ない。冷たいコンクリートに膝を付け、上目遣いに千佳子ちゃんの射るような視線を覗く。
――答えなさいよ! ねぇ!
彼女は木製の軽いバッドで私の肩を思い切り叩いた。痛みはそれほど大きくはない。先日「素手も良いけど、バッドで叩いて欲しい」とお願いしたところ、私は金属バットではさすがに命の危険性があるため、木製のバッドでお願いしたのだが、実際の試合で使うようなしっかりとした物より軽くて柔らかい素材の物にしたのは、彼女の未だに捨てきれない優しさかもしれない。
――とんだ変態なのね。私にこうしてもらえるのが、溜まらなく好きなんでしょう?
彼女は得意のローキックで私の横顔を思い切り蹴り飛ばした。両腕を紐で堅く締め付けられているため、そのままコンクリートの地面へと顔面を打った。彼女は俯せになった私の背中を幾度もバットで叩き付けた。
――そんなだから彼氏が出来ないのよ。
――そのまま女にいじめられなさい。
――それがあなたにお似合いだわ。
――あなたは変態でしかないの。
――でも、それでいいのよね。
――それがお似合いなのよ。
――男に抱かれるよりも、
――女の方が良いから。
――恥を知りなさい。
――自らの立場に。
――己の性癖に。
――知ったら、
――今すぐ、
――死ね。
最後の一撃を受けたときは、既に腫れが強くなっているのか、あまり痛みを感じられなかった。発熱しているのが分かる。彼女から受けた愛情の温度が、私の身体に伝わっていく。彼女の言葉が脳内で縦横無尽に暴れ、心の壁を溶かしていく。そしてその先には、息の上がった彼女の強い眼差しが僅かに覗く。
もっと、もっと欲しい。
彼女の愛情を、受け取りたい。
それが例え、偽りの愛情であっても。
私は必死に立ち上がろうとするが、足も縛られているため、しゃくとり虫のような動きしか出来ない。
「……今日は終わり。これ以上攻め続けたら、クラスのみんなにばれてしまうわ」
千佳子ちゃんは我に返ったように冷静にそう言うと、腕の紐だけをほどき、「足は自分の手でほどきなさい」と告げてさっさと屋上をあとにしてしまった。
夏休みが開けてから、一週間が経った夜の日のことだった。
作品名:被虐的サディスティック 作家名:みこと