ブラックジャックの消息
Episode.4
その後、予告通り達也は学校に来なくなった。
名古屋の専門医がいる病院に入院したらしいが、彼が再び戻ることはなかった。
達也の心臓はもう限界だったそうだ。
生まれたときから成長に対応できないと分かっていたらしい。
恵は達也の母親から、葬儀も全て終わった後に聞かされた。
「いつも連絡帳ありがとう。」
痩せてしまった達也のきれいな母親は恵にそう言った。
葬儀には学校の誰も呼ばれなかったし、学校から彼の死についての報告もなかった。
彼が死ぬ少し前に転校届けが出されていた為、死んだ時には生徒として在籍していなかったことになっていたからだ。
達也が自ら希望してしたことだろうと恵は思った。
そうでないと、恵の後ろの席には白い菊の花瓶が置かれることになっただろう。
そうなる前に彼の机は撤去されていた。
恵はそれがありがたかった。
あたしたちのことは誰も知らない。
でも、恵は満足だった。
だって達也は、冥途の土産に恵とのデートの思い出を持っていったんだから。
作品名:ブラックジャックの消息 作家名:雪猫