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木村 凌和
木村 凌和
novelistID. 17421
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ローレンツ-mix

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 イオレは父の姓を名乗っている。母を置いて来てからずっと、父がそうしてきたから。それがなぜなのか、イオレは知らない。もしも母親が自分達を探そうとしたときに見つけられるように――もしもそうだったとしたら良いとは思っていたけれど。
「母さんの戸籍でも捏造するってわけ」
 そもそも母親の方の姓はこの辺りでは目立ち過ぎる。
「捏造はする。どうやって出世するつもりなのかは知らないが」
 出世?イオレの頭の中に疑問符がいくつか出現する。それはまるで、本人が来るかのようだ。
 話が終わったつもりなのか、父親は気だるげに自室へ向かう。
「母さんが来るの?」
 母親がこの名前で見つけてくれたのかもしれない。そして、あの常軌を逸した家から自由になって、父と母とで暮らせるのだろうか。
「……そうだよ。戸籍上も親子でありたいだろう」
 あいつだって。小さく付け足した言葉はイオレには正確には聞き取れなかった。

***

 母親は、イオレの平手に平然としていた。
 言いたい事は山のようにある。有り過ぎて、喉につかえてしまった。
 母親の脇にいた、新しく『父親』になる男の方が動揺している。それにもひどく腹が立った。
「……これで、許すから。そっちの人は早く行って。消し炭じゃ済ませられない」
 この男は気に障ったが、憎らしくは思わなかった。父親だってやっていた事だから?今はどうでもいい。母親と、嘘は言わなかった父親に腹が立つ。その分を、この男に当たり散らしてしまいそうだった。


fin.
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長編主要人物の元恋人と娘。

作品名:ローレンツ-mix 作家名:木村 凌和