夢問人
「…あああああああ! 」
少年が去った後、青年は頭を抱えて這い蹲っていた。青年は苦しんでいた。あの少年の目が怖かったのだ。
自分を尊敬する、あの真直ぐな眼差しが怖かった。
それは、忘れようとしていたものを思い出させた。
昔の自分。
夢や希望に溢れていた、あの日。
信念を貫いた、あの時。
街から逃げ出した時、全て捨てた。
思い出す度、辛さで胸が裂けそうになった。
現状を受け入れるには、捨てるしかなかった。
長続きしなかった栄光。
予想もしなかった現実。
そして、日に日に強まる、軽蔑の眼。
生きるために、輝きに満ちていたあの頃を忘れるしかなかった。
そうしないと、自分を保つことが出来なかった。
現実は、青年の心に深い傷を負わせていた。
青年の側には、バラバラに散った薬と、少年の布袋が転がっていた。
人の弱さを知るには、少年はまだあまりにも幼かった。