夢問人
「だって…俺、見たんだ! あんた勇者様だよ! 」
それでも、少年の興奮は治まらない。
「ほら、やっぱり! あのパレードで見たんだ! …わぁ、本物だよ! 聞いてくれよ、俺、
おれっ…」
「帰れと言っているんだ! 」
少年の話を遮り、青年は怒鳴った。少年は何が起こったかわからず、その動きを止めた。
「お前みたいな街の人間と、これ以上関わる気はないんだ」
「…え? 」
思わぬ返答に、少年は耳を疑った。
「お前だって、言っているんだろう? 勇者は腰抜けだとか、所詮何も出来ないだとか」
それは、まさしく街の評判だった。
「…違う、俺…」
「もうお前たちに利用されるのは御免なんだ。そっとしておいてくれ」
「…俺は、そんな事言ってない! 俺は、勇者様に会いたくて…それで…」
言葉が詰まった。
まさか、街の噂がここまで青年を傷つけているとは思っても見なかったのだ。ただ、憧れの
人を前に伝えようと思った。
両親のこと。
薬師としての夢。
そして、自分がどれだけ勇者を尊敬しているのかを。
少年がそう再確認した、その瞬間。
「笑いにきたんだろう? 」
そう青年は吐き捨てた。
「え? 」
少年は思いも寄らぬ言葉に驚き、今度は青年の顔をしっかりと見た。
「! 」
少年は絶句した。