続・三匹が行く
そこには感動のあまり陶酔しているイジューインと、絶句して立ち尽くしているセンリの姿があった。
「あ、チヒロ、目が覚めたの? すごいよ、ここれぷれの森だよ。こんな所まで飛べちゃうなんて、僕ってば天才かも」
「……れぷれの、森?」
「そう、れぷれうさぎの生息すると言われている森だよ。そこでも彼らの姿を見ることは稀なんだけど、今は……ほら、こーんなに!」
バッとイジューインは手を広げた。彼らの周り……特にセンリの周りには沢山のれぷれうさぎが集まっていた。二十……いや、三十匹以上はいるだろうか。
「これってやっぱりチーがいるからなのかなあ?」
「あれ、そういえばチーは?」
イジューインの言葉で気がついたのか、チヒロはきょろきょろと辺りを見まわす。
「向こうから言って来ない限り分かんねーよ、そんなの」
れぷれうさぎは、大きさに大小の違いこそあれ顔や形の作りは殆ど同じで、見分けなどつけられない……つけようがない。
センリも少し見渡してみたが、嫌になったので見るのを止めた。
しかし……
「あ、そんな所にいたんだ、チー」
チヒロは迷うことなく一匹のれぷれうさぎを見つけ出して抱き上げる。
「……あいつ、化け物か?」
「さすがチヒロだね」
呆れた様子でセンリが言い、イジューインはにこやかな笑顔で答えた。
そんな中、チヒロはチーの様子が何処かおかしい事に気づく。
「チー?」
「……ちー……」
少し困ったような声で鳴くチーの視線を追ったチヒロは、そこに二匹のれぷれうさぎの姿を見つけた。
「……チーのお父さんとお母さん?」
「ちー」
「そっか……」
チヒロの問い掛けに頷いたチーに、チヒロは少し悲しげな表情で頷き返した後チーをそっと地面に下ろしてやる。
「じゃあ、ここでお別れだね」
「……ちー?」
「いいの、チヒロ?」
話を聞いていたイジューインが、確認するように問いかけてきた。
「だって、やっぱり家族は一緒にいるべきだから」
笑ってそう答えるチヒロの瞳は、しかし淋しげな色で彩られていた。
「チヒロ」
そんなチヒロにセンリは何かを差し出した。
「ん?」
それは、赤くて細い一本のリボンだった。
「目印でもつけとけ」
「何で?」
「いくらお前でも、何年も後に会った時には分からないだろ」
「分かるさ」