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透夏(とうか)
透夏(とうか)
novelistID. 1875
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三匹が行く

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 予期せぬチヒロの行動に何事かと驚いたセンリは、身を屈めて彼の顔を覗き込む。
「……くー……」
「……寝てやがる」
 よほど眠かったのか、チヒロは布団に倒れ込むなり安らかな寝息をたてていた。
「ガキ」
 そう悪態をつきながらも、センリはし合わせそうに眠るチヒロにそっと布団をかけてやる。
 それから改めてチヒロの横にいるチーに目をやった。
「……何で俺もこんなもん買ってやっちゃったかなあ」
 頭を抱えながら苦笑まじりにそう呟いたセンリに、意外な方向から声がかかった。
「まあまあ」
 驚いてそちらを見ると、部屋の入り口のところにイジューインが立っていた。
「いいんじゃない、チヒロも相当チーのこと気に入ってるから」
「まあ、それはそうなんだけどさ……」
「珍しいんだよ、チヒロが何かをねだるなんて」
「そうなのか?」
「うん。昔からあまり駄々とかこねない子だったから」
「ふーん……まあ、俺の場合はねだられて、ってのとはちょっと違うけどな」
 ……あれは、ねだるというよりは命令に近かったような気がする……
「しっかし……」
 センリはチヒロの枕もとのチーをひょいっとつまみあげる。
「これ、本当にうさぎなのかよ……」
 チーはある時立ち寄った町でセンリがチヒロにねだられて買ってやったものである。
 その外見に思わず「何これ?」と尋ねたものだが、それに「うさぎ」ときっぱりハッキリ一言で返せたチヒロは相当大物だと思う。
「そりゃあさ、うさぎってのは丸っこいしピンクっぽい色もしてるけど、さー……」
 自分の知っているうさぎ像と比較しながら言うセンリに、イジューインはさらりと答えを返してきた。
「ああ、れぷれうさぎだからね」
「へ?」
「確かにうさぎには違いないんだけど、チーはれぷれうさぎっていう特殊な種類なんだよ。森の奥深くに住んでいて滅多に人前に出てこない珍しいうさぎなんだよ」
「…………」
 センリは摘み上げているチーを思わずまじまじと見つめた。
 珍しいといわれれば珍しくも見えてくる。
「ふーん」
 普通のうさぎと違う形状にそれで納得したのかどうかは不明だが、センリはぽいっと無造作にチーをチヒロの枕元に返す。珍しいからありがたみがある、というわけではないようだ。
「ちー」
作品名:三匹が行く 作家名:透夏(とうか)